研究課題/領域番号 |
20K12396
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
CHOI SUNKYUNG 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任講師 (40814116)
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研究分担者 |
ヘンリー マイケル・ワード 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (80586371)
花岡 伸也 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (90467027)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 観光危機管理 / 外国人観光客 / 観光政策 / 避難計画 / 情報収集 |
研究実績の概要 |
本研究は 観光危機管理において、①観光地での観光危機管理、②災害情報収集行動、③避難行動と避難所計画に分けて研究を進めている。 まず、観光地での観光危機管理の評価のため、オリンピック会場および観光地における外国人観光客の災害サポートに関する状況を分析した。東京オリンピック2020大会競技会場および北海道の観光地における、外国人を対象とした災害サポート体制を評価するため、災害ハザード調査により評価指標を作成し、42カ所のオリンピック競技会場と38カ所の北海道の観光地を評価した。その結果、災害ハザードがあると確認された箇所はオリンピック競技会場7カ所、北海道の観光地6カ所と低い傾向にあった。また、災害時に情報提供の役割を担う外国人観光案内所(TIC: Tourism Information Center)の有無を確認したところ、周辺にTICが1つだけは2か所、TICなしは3カ所であり、残りの場所にはTICが設置されていた。 また、外国人観光客の情報収集行動の分析のため、2019年の台風19号におけるAIチャットボットと台風15号・19号におけるTwitterのデータ収集及び分析を行った。行政と交通機関が外国人観光客に提供する情報として、AIチャットボットの集計結果から、台風情報が23%、フライト情報が35%、交通情報が10%、施設情報が12%、チェックイン情報が20%であることがわかった。また、Twitterデータを用いた内容分析と感情分析を進めている。 さらに、避難行動と避難所計画の分析の一つとして、日本人の外国人観光客に対する受け入れ程度と避難所の特徴に関する独自アンケートを設計し、プレ調査と本調査を実施した。過去の災害と避難所利用経験、首都直下地震シナリオにおける避難所利用、外国人に対する受け入れ程度と認識、コロナ禍の生活の変化を聞いており、データの解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では1年目の研究の中心は実態把握であり、災害時の外国人観光客の安全・安心に関するレポート・マニュアル・ガイドライン等の網羅的な分析と、過去の災害事例での対応について現地でヒアリングを行う予定であった。しかし、コロナ禍で外国人観光客が来日できず、また現地調査も実施できないため、研究実績にまとめたように、当初は2年目に予定していたデータ収集と分析を先に進めた。
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今後の研究の推進方策 |
観光地での観光危機管理に関する評価に関しては、観光危機管理に関わっている行政や他のステークホルダーにアンケート調査を実施し、その結果を用いて多基準意思決定分析(MCDM)を行う予定である。 災害情報収集行動の分析については、AIチャットボットの解析と、Twitterデータを用いた内容分析と感情分析を継続して実施する。また台風以外の災害として、地震など他の災害に分析対象を拡大し、外国人観光客が求める情報の差異を統計的に解析する。 避難所行動と避難所計画に関しては、前年度に実施したアンケート調査のデータから、災害時の外国人観光客の東京内での移動経路を集計し、避難所計画のための避難所配置モデルを構築する。外国人観光客が必要とする避難所の特徴を明らかにし、その指標を用いて観光地のリスクマップを作成し、どのような施設が活用できるか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の今年度の計画では、過去に災害対応経験がある観光地かつ観光危機管理の先進事例でもある沖縄と京都を訪問し、現地調査とヒアリング調査を行う予定であった。さらに、国際学会に現地で参加する予定であったが、オンライン形式の開催となった。このように、新型コロナウィルス感染拡大のため国内及び海外に出張できなかったことから、次年度使用額が生じた。 次年度使用計画については、コロナウィルスの状況を踏まえながら、日本の観光危機管理の先進事例調査を再開し、今年度の調査結果を発表する国際学会に参加する予定である。また、避難所配置モデルのために必要な外国人観光客の避難所利用に関する調査や位置データのようなビッグデータの購入を検討する。
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