研究課題/領域番号 |
20K12396
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
CHOI SUNKYUNG 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任講師 (40814116)
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研究分担者 |
ヘンリー マイケル・ワード 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (80586371)
花岡 伸也 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (90467027)
MAHARJAN RAJALI 一般財団法人運輸総合研究所(学術研究チーム), その他部局等, 研究員 (00905309)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 観光危機管理 / 津波避難対策 / エージェントベースモデル / 多言語対応 |
研究実績の概要 |
本研究は、外国人観光客の津波避難行動における情報提供と避難所計画の影響分析をエージェントベースモデル(Agent Based Model)でシミュレーションを行った。訪日外国人の観光地として大阪市港区をケースとして、多言語対応や避難所計画の現状を把握するため現地調査を行った。現地調査では避難誘導サインの位置・内容・多言語化・デザイン・可視性のデータ収集を行った。避難誘導サインは日本語、英語、韓国語、中国語など複数の言語が使用されていた。サインの図は16メートルの距離から見えるが、日本語のテキストは9メートル、英語、韓国語、中国語はそれぞれ6.6メートルが必要であった。多くの避難誘導サインは避難所の近くに配置されているが、観光地が多い北側にはあまり配置されておらず、避難経路を把握することが困難であった。 外国人観光客の言語能力、防災意識、観光地域の地理的な理解など特性考慮して、津波発生時における外国人観光客、居住者、日本人観光客のエージェントベース津波避難行動モデルを開発した。さらに、避難誘導サインの可視性や多言語対応・通信環境の有無・避難所のキャパシティの増加の対策が、各グループの避難率・避難時間に与える影響を分析した。シミュレーションモデルおよびシナリオ分析の結果から、外国人観光客と居住者の避難行動には避難所への到着時間に差異があることが確認できた。外国人観光客はサインのアクセスと多言語対応がされることにより到着時間を減少させることができた。外国人観光客の避難を支援するために、避難所のキャパシティを増やすだけではなく、多言語での情報提供を考慮に入れた包括的な計画が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の3年目の計画では、外国人観光客の避難行動分析が主な目的であった。外国人観光客における避難行動分析を現地調査で行うことだけではなく、合わせてエージェントベースモデルのシミュレーションを進めた。現地調査で得たデータを基にシミュレーションに必要なデータを収集し、スモールスケール・フルスケールのシミュレーションと感度解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
災害情報収集行動の分析については、成田空港で活用されているAIチャットボットのデータを活用し、多様なデータに基づく解析を行う。 外国人観光客の避難行動における情報提供と避難所計画の影響分析に関しては、現在開発されているエージェントベースモデルを他の津波リスクが高い観光地に適応することを試みる。また、過去にあった津波避難のデータを収集し、シミュレーションモデルの妥当性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では外国人観光客におけるアンケート調査を現地で行う予定であった。しかし、コロナ禍により実施できなかった。また、研究成果の発表を行う適切な国際学会の開催が次年度となり、年度内に旅費を使用しなかった。以上のような理由により、次年度使用額が生じた。次年度の具体的使用計画としてはアメリカのセイントルイスで行われる 「The 53rd Annual Travel and Tourism Research Association International Conference」の国際学会に参加して、研究成果を発表する予定である。
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