研究課題/領域番号 |
20K12401
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井口 梓 愛媛大学, 社会共創学部, 准教授 (50552098)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 登山 / 登山者 / 観光行動 / アンダーユース / 登山道 |
研究実績の概要 |
今年度は、(1)登山事故と登山道の調査、(2)登山者の行動調査を実施した。 (1)石鎚山系の行政管理者等の聞き取り調査、及び遭難事故データ175件を収集し、地図化して分析した。石鎚山系の登山事故を大別すると、①二の鎖山頂周辺での滑落・転倒・体調不良、②前社ヶ森、試しの鎖付近(下山の急峻な斜面)の転倒・足通、③成就社の転倒と分岐の道迷い、④西之川から表参道、土小屋に至る登山道での道迷い、以上の4つに集中している。上記の結果を踏まえ、登山道調査では登山者が集中する表参道<山頂成就―弥山>及び裏参道<土小屋―弥山>、加えて西之川―成就、西之川―岩原―刀掛―十字分岐―夜明峠、八丁分岐―十字分岐―ツナノ平合流点―土小屋を結ぶ登山道を16区間に分割し、ウェアラブルカメラによる登山道の景観調査を実施し、アンダーユースの実態(視認性の低いくぼ地、谷沿い登山道の荒廃、災害による登山道崩落、植生の変化等)と道迷い発生の関係性について明らかにした。 (2)弥山山頂にて登山客の定点観察及び行動調査(115人)を実施し、登山経験・来訪経験と危機意識により5タイプに大別した。Ⅰ類型(15%)は登山経験がない観光志向、Ⅱ類型(24%)は登山経験を有する百名山制覇中の登山者、Ⅲ類型(14%)は登山経験年数が短い自然散策の近隣居住者、Ⅳ類型(43%)高い登山経験を有し自然散策にきた遠方居住者、Ⅴ類型(43%)高い登山経験を有し登拝又はトレーニングにきた定期登山者である。事前の情報収集、登山計画・コースタイム、装備などいずれの項目でも、Ⅱ類型が最も危機意識が高く、一方経験のないⅠ類型と最も経験のあるⅤ類型が危機意識に課題がみられた。特にⅤ類型は高年齢であり当該登山道に対する「慣れ」からくる準備不足、計画不足が顕著であり、将来的な課題が多いことが明らかとなった。以上の成果は、今年度中に研究発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの拡大により、県外(予定では大山)での調査が実施できなかったこと、加えて登山者の対面での聞き取り調査の許可が9月まで得られなかったため、実施計画を大幅に変更せざるを得なかった。昨年度一部収集した事故データと照らし合わせるために石鎚山弥山山頂に至る全登山道を徒歩で調査しウェアラブルカメラで記録撮影した。また9月下旬から山頂部における登山者の定点観察調査を実施し、10月以降に登山行動と危機意識に関するヒアリング調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
調査計画の1年目・2年目に実施できなかった大山での現地調査を実施する予定である。今年度から石鎚山頂でのヒアリング調査も制限付きで実施できるようになりつつあり、事例を比較するために大山でも同様に、登山者の調査及び登山道調査を実施し、加えて登山口門前町の観光事業者調査、一木一石運動に関する現地調査を実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの拡大により、今年度予定していた県外百名山での現地調査が一切実施できなかったこと、また石鎚山の登山者に対する対面での聞き取り調査(行動調査)が9月末まで実施許可がおりず閉山する10月下旬までの短い期間での現地調査となったためである。 次年度は、近畿百名山のうち大山を重点エリアとして位置付け、各登山口に調査員を配置し、短期間での調査実施を予定している。事故データは既に収集済みであり、登山道管理者および一木一石運動の関係者、観光事業者への聞き取り調査及び、ウェアラブルカメラを用いた登山道の景観調査を実施する予定である。
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