研究課題/領域番号 |
20K12402
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
ラナウィーラゲ エランガー 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員研究員 (90735789)
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研究分担者 |
菊地 俊夫 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (50169827)
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研究期間 (年度) |
2021-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | ワイルドライフツーリズム / 野生動物 / 人間社会 / 共生システム / 大都市域 / 獣害 / コアラ / ドック・アタック |
研究実績の概要 |
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で国内外の調査のための出張、および成果発表のための国際会議への出席ができなかった。また、野生動物と人間社会の共生システムに関する調査は、スリランカのゾウについて行う予定であったが、コロナウイルス感染症の影響で余儀なく中止した。その一方で、オンラインにおける国際会議がいくつか開催され、それらに参加し研究成果の発表を行った。例えば、菊地は国際地理学会の持続的農村システム会議にオンラインで出席し、カナダのブリティッシュコロンビア州における「農」資源利用の有用性に関する発表を獣害の抑制を絡めて発表した。加えて、東京大都市圏における「農」資源の有効活用の1つとして、獣害の抑制があることを公表した。さたに、エランガーと菊地は大都市ツーリズムの国際会議にオンラインで出席し、東京大都市圏のアーバン-ルーラル・フリンジにおける獣害の増加を里山の荒廃と関連付けて説明し、里山の整備とり活用が獣害の抑制につながることを明らかにした。他方、国内外において予定した調査が十分にできなかった代わりに、野生動物と人間社会の共生システムに関する文献や統計を東京大都市圏とオーストラリア東海岸地域(ニューサウスウェールズ州とクインズランド州)について収集し、人間社会の活動テリトリーの拡大・縮小と野生動物の生息域の拡大・縮小の関係を都市・農村共生の「ゆらぎ」モデルとしての仮説を構築した。オーストラリア東海岸地域におけるデータ収集では、コアラと人間との関係に関わるものを収集するとともに、都市住民がペットとして飼っている犬がコアラを襲うドック・アタックに関するwebアンケートを試験的に実施した。このアンケートは、野生動物と人間社会の共生システムをコアラと人間活動の関係を明らかにするデータとなるため、試験的実施の結果を踏まえて改良し、次年度の本実施に備えるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの調査のデータに基づいて、野生動物と人間社会の共生システムを含む「農」資源に関する東京のツーリズムの研究成果をオンラインの国際会議で発表したが、多くの内外の研究者と議論して野生動物と人間社会の共生システムに関する仮説モデルの精緻化を図ることはできなかった。また、デスクワークとしての獣害や野生動物と人間社会の共生システムに関する文献調査や統計分析、およびデータの地図化などの作業は進んだが、国内外における事例地域に関するフィールドワークはコロナウイルス感染症の影響によりほとんどできなかった。このようなのフィールドワークの滞りが、研究の進捗状況に大きな影響を与えた。研究に関するフィールドワークの進捗は遅れているが、野生動物と人間社会の共生システムの理論的なフレームワークの検討や地域的な役割の考察などがじっくりと時間をかけてできた。また、野生動物と人間社会の共生システムに関連して、コアラのドック・アタックのWEBアンケート調査の準部もフィールドワークの遅れを補完する形で進めた。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている東京大都市圏の獣害の分析や、オーストラリア東海岸地域におけるコアラのドック・アタックに関する調査を進め、野生動物と人間社会の共生システムに関する仮説モデルを構築する。この仮説モデルの検証を国内外の諸地域で検証して、一般化に努めることが基本的な目標である。その後、野生動物と人間社会の共生システムに関する研究を国内外の会議で成果として報告し、国内外の研究者との議論を行うことで、野生動物と人間社会の共生システムのモデルをさらに精緻化することが第二の目標になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルスの感染症の影響で、国内外の会議での研究成果の発表がオンラインとなり、現地に出張することがなかった。それに加えて、補足調査としてのフィールドワークができなかったことなどが、未使用額の次年度使用の生じた大きな理由である。これは、研究者自身だけでなく、官公庁や地域っコミュニティ、および農業団体や農家などの調査対象者の安全のためにもやむをえない事情であったと考える。また、参加発表を予定していた学会の学術大会や研究会のすべてがオンラインとなり、研究の討論や議論のための出張もできなかった。そのため旅費の多くが未使用となった。以上のことを踏まえて、次年度の研究費の多くは国内外での研究成果発表のための旅費や補足調査の旅費に使用する予定である。
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