研究課題/領域番号 |
20K12405
|
研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
吉光 正絵 長崎県立大学, 国際社会学部, 准教授 (60316172)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 観光資源 / ライブ・エンターテインメント / ファン / 楽しさ / 地域活性化 / 音楽イベント |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、コンサートや音楽イベント等のライブ・エンターテインメントを目的にした観光によってファンが感じる「楽しさ」に関する調査結果の分析から、それらの持続的な観光資源化や課題を明らかにすることである。令和3年度は、令和2年度にひきつづき、covid-19の世界的な流行により、観光やオフラインで開催される従来型のライブ・エンターテインメントへの参加への自粛傾向が続いた。このような社会的状況のため、今年度は、筆者がこれまでに行ってきたファンに関する研究の総括、ライブ・エンターテインメント観光に関する文献研究、令和3年度に実施したライブ・エンターテインメント観光のリピーター層を対象にしたオンライン調査結果の分析に力を注いだ。特に、この調査結果のうち、covid-19の世界的な流行前のライブ観光の楽しさに関する回答の分析から有益な成果が得られた。音楽イベントに通うファンたちの楽しさは、実演家や関連スタッフ、他のファンたちと同じ時間と空間を共有しながら一体感のあるステージ・パフォーマンスの感動を味わうことから生じていた。特に、ファンの間で重要視されている場所で開催されるイベントやコンサートへの積極的な参加がみられた。そこでは、会場ごとの運営状況の違いや地域住民との交流など、現地でしか味わえない異文化体験が「楽しさ」の大きな要素となっていた。これらは、ファン・ツーリズムで議論されてきた実演家にちなんだ場所をまわることを目的とする聖地巡礼型観光と関連した観光行動であると考えられる。ここに見られるライブの一体感や会場への愛着、地元住民との交流といった傾向は、コロナ禍収束後の安心・安全なライブ・エンターテインメント観光を考えていく上で非常に重要な要因であると考えられる。そのため、有意義な成果が得られたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最終目標は、コンサートや音楽イベント等のライブ・エンターテインメントを目的にした観光によって体験者が感じる「楽しさ」に関する調査結果の分析から、それらの持続的な観光資源化や課題を明らかにすることである。令和3年度は、量的調査を実施する予定であったが、昨年度にひきつづきcovid-19の流行による活動制限があり、ライブ・エンターテインメントは一部再開されたものの、開催や参加を自粛する社会的な風潮も高かった。そのため、この段階で量的調査を実施しても十分な成果が得られないと判断し、量的調査を実施しなかった。そのかわり、令和2年度に実施した、オンラインでの深層調査結果の分析を行った。その点から、遅れていると判断した。ただし、深層調査結果の分析から、今後行うcovid-19の世界的な流行が収束した後のライブ・エンターテインメント観光に関する質問項目の作成にとって有意義な成果は得られた。それは、ファンがライブから楽しさを得る要因としての、ライブ会場で得られる実演家やスタッフ、他のファンとの一体感やそれによる個別の会場への愛着、地方会場など地元住民との交流等である。これらの項目については、コロナ禍収束後の安心・安全なライブ・エンターテインメント観光に役立つ調査項目を考える際に非常に重要な項目であると考えられる。成果については、査読を通過していた国際学会が延期となったため、国際学会での報告はできなかったが、日本国内の学会では報告できた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、コンサートや音楽イベント等のライブ・エンターテインメントを目的にした観光によって体験者が感じる「楽しさ」に関する調査結果の分析から、それらの持続的な観光資源化や課題を明らかにすることである。令和4年度もcovid-19の感染が拡大しているが、日本のライブ・エンターテインメント産業は、感染対策の徹底化を行いつつ、段階的な通常化を試みている。ただし、現在では、まだフィールドワークやインタビュ調査を実施することは危ぶまれる状況にある。また、大学や音楽イベント等での集合法による調査は不可能であると考えられる。そのため今年度は、調査会社に委託するなどして、安全なオンラインでの量的調査を実施する予定である。この場合には、令和2年度で実施したオンライン調査や、あわせて、ひきつづきリピーター層への継続的な調査の結果から明らかになっていることを項目として反映していくことを予定している。具体的な調査項目としては、ライブ目的の観光行動体験者が感じる「楽しさ」に関する項目である①ライブ鑑賞②観光③交流④エンパワーメントととともに、コロナ禍を体験することで得られた感染対策や安心安全な体験に関するを分析項目の追加を考えている。それらの調査から得られた成果については、開催が延期となった国際学会での報告や、報告の依頼を受けた国内学会でのシンポジウムと論文、投稿論文、依頼をうけた著書などで、随時発表していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は、ライブ・エンターテインメントの観光資源化と課題を明らかにするために体験者が感じる「楽しさ」を調査することである。令和3年度もひきつづき、covid-19の感染拡大のため、観光やライブ・エンターテイメントへの参加は自粛傾向にあった。そのため、量的調査を見送った。また、開催が予定されていた国際学会が次年度に延期され、出版が予定され原稿を提出していた共著の書籍の出版も、次年度にもちこされた。そのため、研究成果が業績として反映されなかった。国際学会については、令和4年度にオンラインで開催される予定であり、共著書の出版準備もいまのところ順調である。量的調査については、調査会社を利用して令和4年度中に実施予定である。
|