研究課題/領域番号 |
20K12410
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
野瀬 元子 大東文化大学, 文学部, 准教授 (60611845)
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研究分担者 |
古屋 秀樹 東洋大学, 国際観光学部, 教授 (80252013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インタープリテーション / ヘリテージ / 歴史文化資源 / 異文化間 / 語り部 / ガイド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、歴史文化資源に対する来訪者評価の分析方法の検討、新たなエビデンスを包含した「その土地らしさ」の把握、以上の2点である。 本年度は、これまで実施した1896年に中禅寺湖畔に滞在したドイツ人外交官トロイトラ―の日記データの分析過程で着目した国際観光に関わる時代的背景に関する調査として、同じくドイツ貴族で宮中の近代化を担った御雇い外国人オットマール・フォン・モール、ケルン東洋美術館の設立に尽力したアドルフ・フィッシャーの文献から、日本における内地旅行の旅行環境全般の状況、日本の歴史文化資源(古都、名所、芸術、工芸、詩歌、伝統行事、宗教、温泉場、日本旅館)、当時の日本社会に対する評価を把握した。 次に、後者の目的に関わる問題意識から供給側の情報・コンテンツの充実化の検討のため、歴史文化資源を説明・解説するガイドや語り部の活動に着目した研究事例の収集を行った。日本と欧州を対象としてヘリテージ・インタープリテーションに関するトレーニング教材(Thorsten Ludwig, The Interpretive Guide - Sharing Heritage with People, Bildungswerk interpretation, 2015他)の把握、異文化間のガイディング、インタープリテーション上の課題の抽出を行い、地域のヘリテージの価値伝達技術の充実化について検討した。また、地域形成史に関わる出来事について、どのように受け入れ地域側の情報発信のなかで活用できるか、デジタルアーカイブの活用方策の事例収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は研究目的のうち、供給側の情報・コンテンツの充実化の検討のため、歴史文化資源を説明・解説するガイドや語り部の活動に着目した研究事例の収集することができた。一方で、訪日旅行者、日本人の評価の実態把握を目的とした地域の歴史文化資源に対する旅行レビューの収集が終えられていない。異文化間のガイディング、インタープリテーション上の課題抽出を行った結果を具体的な対象地域での旅行者評価データの分析結果と照らし合わせて効果的な方策を検討することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
日本人・外国人旅行者が投稿した歴史文化資源(日光および比較対象地域となる京都、仙台、青森、秋田、新潟、長崎、福岡、高岡、金沢)の旅行レビューを対象とした形態素解析から異文化間の特徴を把握する。日本人との差異、さらには外国人の中でも欧米人などでみられる日本の独特の歴史、中国からの来訪者では文化財の保全に対する認識が卓越するなど、国籍・地域によるアタッチメント(愛着心)の差異を把握する。これらを通じて、各属性が持つと考えられる関心、重要度を把握する。 形態素解析で抽出した語の出現数、出現割合の比較から異なる言語間の差異に着目するだけでなく、国籍等によるアタッチメント、共鳴するポイントの差異を考慮した効果的に働きかける言語案内のコンテンツ、インタープリテーションのあり方を明らかにし、訴求力の高い情報提供、来訪者の満足度の一層の向上といった新たな効果について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により外国への渡航が行えなかったことから、2022年度の執行を考えている。なお、出入国の制約状況や先方の研究者の受け入れ可能性も勘案し、日本国内で研究を効果的に進めるための代替的方法についても検討する。
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