研究課題/領域番号 |
20K12414
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
奥田 隆明 南山大学, 経営学部, 教授 (40233457)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インバウンド / 周遊観光 / 交通ネットワーク / 観光ビックデータ / 階層型モデル / サービス・イノベーション / 独占的競争モデル |
研究実績の概要 |
この研究の目的は、企業が持つ携帯位置情報(観光ビックデータ)を活用して、小地域を対象にした周遊型観光消費モデルを開発し、交通ネットワークの連携効果を計測することにある。今年度はこの研究の2年目に当たり、市町村レベルの訪日外国人流動表を作成し、これを用いて2階層の周遊型観光消費モデルを開発した。また、観光集積の大きさが観光消費に与える影響を分析するために、独占的競争理論に基づいた周遊型観光消費モデルを開発した。 まず、リニア中央新幹線の新駅が建設される三重県を取り上げ、訪日外国人の携帯位置情報を活用して市町村レベルの訪日外国人流動表を作成する方法を提案した。また、作成した訪日外国人流動表を用いて、三重県内における観光消費の実態分析を行った。分析の結果,西日本からの外国人は伊勢志摩地域を周遊していること、東日本からの外国人は桑名市などを観光しているが、三重県北部を周遊する外国人は少ないことなどを明らかにした。 次に、都道府県レベルと市町村レベルの観光消費を分析する2階層の周遊型観光消費モデルを開発した。このとき、上述した市町村レベルの流動表を用いてモデル・パラメータを推定し、リニア中央新幹線の開業が訪日外国人の観光消費にどのような影響を与えるのかについてモデル分析を行った。また、こうした分析結果を踏まえて、今後、三重県が取組むべきサービス・イノベーションについても考察した。 さらに、交通結節点の観光集積を高める政策を評価するために、観光集積の大きさが観光消費に与える影響を分析する独占的競争モデルを提案した。このモデルでは、観光客が観光サービスの多様性を求めて周遊しながら観光消費を行うことが仮定される。また、観光企業は一定の固定費用を持つことが仮定され、両者のバランスにより観光企業の集中と分散が決定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、リニア中央新幹線の新駅が建設される三重県を取り上げ、訪日外国人の携帯位置情報から市町村レベルの訪日外国人流動表を作成した。また、都道府県レベルと市町村レベルの観光消費を分析する2階層の周遊型観光消費モデルを開発した。さらに、交通結節点の観光集積を高める政策を評価するために、観光集積の大きさが観光消費に与える影響を分析する独占的競争モデルを開発した。これによって、当初計画していた分析モデルはおおむね完成した。他方で、都道府県レベルと市町村レベルの観光消費を分析する2階層の周遊型観光消費モデルを用いてリニア中央新幹線の開業が訪日外国人の観光消費に与える影響についてモデル分析も行った。研究1年目は研究の進捗がやや遅れた状況にあったが、研究2年目によりおおむね順調に進展している状況にすることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目はこの研究の最終年度に当たるため、今年度開発した都道府県レベルと市町村レベルの2階層の周遊型観光消費モデルを用いて、モデルの有効性を検証すると同時に、幹線交通ネットワークと地方交通ネットワークの連携効果について分析を進めたいと考えている。また、今年度は、高速鉄道投資に伴い必要なサービス・イノベーションという観点から研究を進めた。特に、サービス・ドミナント・ロジックに基づく価値共創マーケティングの考え方は、高速鉄道投資に伴うサービス・イノベーションを考える上で多くの視点を与えるものと考えられる。次年度は、これまで行って来たデータ・サイエンスの視点からのアプローチだけでなく、これにサービス・マーケティングの視点も取り入れ、サービス・イノベーションのあり方についても検討していきたいと考えている。
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