今年度は、これまで開発してきた周遊型観光消費モデルと、観光消費の空間分析に用いられる空間的自己相関モデルとの関係を明らかにし、交通ネットワークの改善による空間重み行列の変化を把握する方法を提案した。また、この方法を用いて、リニア中央新幹線の名古屋開業による空間重み行列の変化を数値シミュレーションにより求め、沿線の観光消費に与える影響について分析を行った。分析の結果、東京都での観光消費は沿線地域の観光消費にあまり大きな影響を与えないのに対して、大阪府での観光消費は東京都の観光消費に大きな影響を与えるようになることが明らかになった。 また、訪日外国人の携帯位置情報を活用することにより2階層(都道府県単位と市区町村単位)の周遊型観光消費モデルを開発し、リニア中央新幹線の名古屋開業と東海道新幹線の運行パターンの改善が愛知県の観光消費に与える影響について分析を行った。分析の結果、愛知県の観光地開発にはこれらの交通ネットワークの連携が必要であること、一方、三河安城駅はアクセスに多くの課題を抱えているため、投資効果が空間的に波及しないことなどを明らかにした。 さらに、過年度に開発した三重県モデルを用いて、リニア中央新幹線の名古屋開業と大阪開業が三重県の観光消費に与える影響について分析を行った。これらの分析結果を踏まえ、名古屋開業に比べると大阪開業の方が三重県の観光地に与える影響は大きいこと、しかし、名古屋開業から大阪開業の間にも、三重県新駅へのアクセスを向上させる取り組みが重要であることなどを指摘した。
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