研究課題/領域番号 |
20K12415
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研究機関 | 愛知東邦大学 |
研究代表者 |
宮本 佳範 愛知東邦大学, 経営学部, 教授 (60571304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オーバーツーリズム / 観光者の責任 / 問題行為分類 / 観光者の認識 / リスク |
研究実績の概要 |
研究計画の2年目となる今年度(2021年度)は、観光者の問題行為につながる観光者の思考プロセス等について明らかにするため、計画では海外旅行中のハイリスク行為に対する認識とそれに対する考え方、その他関連する問題行為について観光者に対する聴き取り調査などを行う計画であった。しかし、海外での調査は新型コロナの世界的流行の影響で本年度も実施できなかった。そのため、昨年度から行っていた本研究課題のうち第1研究課題としていた観光者の問題行為の類型に関する研究をメインで実施した。なお、第1研究課題も当初は東南アジアで日本人個人旅行者に対する聴き取り調査や行動観察を踏まえて問題行為認識を類型化する計画であった。しかし、それができなくなったため、文献研究およびこれまでの研究に基づき、若干問題意識を修正し、オーバーツーリズムの諸問題を独自の視点から整理しなおすこととした。 具体的には、オーバーツーリズムの諸問題について、問題の原因や行為主体の違い、観光者の認識や過失の有無などに基づく独自のタクソノミーを行ったうえで、問題のタイプ別に責任について考察した。そして、オーバーツーリズム問題の多くはキャリング・キャパシティを“オーバー”したことで生じる問題というより、従来から存在した問題が顕在化した問題だということや、それらの問題のうち観光者個人の責任と言える問題は全体のごく一部であることなどを明らかにした。その研究結果は論文としてまとめ、本学紀要に投稿した(2022年度に刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本助成金が支給された初年度である2020年度当初より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により研究計画に大きな影響が及ぶこととなった。それにより、予定していた研究は一時停止もしくは研究方法の修正を余技無くされた。2020年度は授業のオンライン化対応等の関係でエフォートに大きな影響があったこと、そして、海外への渡航が制限されたことの両面において本研究課題の実施が遅れることになった。一方、今年度(2021年度)は、オンライン化対応による研究時間の減少にともなうエフォートへの影響は少なかったものの、引き続き世界各国で新型コロナの蔓延に伴う入国制限等がなされているため、海外旅行自体がほとんど行われない状況であった。したがって、海外で旅行者に対する調査を前提とした当初の研究計画を見直すこととなった。 すでに述べた通り、本研究課題の申請当初は、今年度海外調査を実施する計画であったがそれを実施することができなかった。この影響は避けようが無く、やむを得ない事情であると考えている。一方で、第1研究課題としていた観光者の問題行為の類型に関する研究は、若干方向性を変更せざるを得なかったものの論文としてまとめることができた。 以上の事から、本研究課題の進捗状況を「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度については、現時点でハワイやインドネシアのバリなど、一部の国や地域が外国人観光客に対するコロナに関連した各種規制の緩和をはじめている。今後もそういった緩和が拡大していけば、当初計画していた観光者のリスク認識等に関する調査を実施したい。ただし、調査が実施できるのが現実的には大学の夏季休暇中(8月~9月前半)であり、そこで海外渡航するためにはすでに具体的な計画を立てる必要がある。しかし、当初本研究の第2課題に関する調査候補地として考えていたペルーやボリビアが未だコロナ規制を緩和していないことなどから、具体的に計画を立てる段階に至っていない。また、仮に8月前に規制が緩和されたとしても、観光者に対する聴き取り調査を行うためには現地を訪れる時点で観光者の動きが活性化している必要があるため、観光客の動向によっては調査が行うことができない。以上のことから、現時点では当初の目的地での調査が困難であることが予想される。 そういった現状を踏まえ、次善の策として、規制が早くに緩和される地域でかつ本研究課題の目的に合致する他の候補地を探すことを考えている。現在は緩和されつつあるインドネシアで実施することができないか検討している。また、2月~3月に実施することも検討するが、大学の学務(入試業務など)との関係で調査日程を組むことができるかは不透明である。したがって、本研究課題は2023年度までの計画であったが、計画を変更し、その期限を延長することも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、海外での旅行者に対する調査を実施することを前提とした研究計画であるため、本年度使用する予定であった予算の多くは旅費であった。したがって、既に述べた通り、新型コロナウィルスの蔓延に伴い海外での調査が実施できなかったことから、ほとんどが未使用となった。 本研究課題は2023年度までの計画であったが、現状ではその期間内に予定していた調査・研究をすべて実施することは困難である。したがって、最終的には研究期間を延長することで当初予定していた研究を遂行することを考えいる。そして、その際に残額を使用する計画である。
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