研究課題/領域番号 |
20K12417
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
有田 理佳 (山本理佳) 立命館大学, 文学部, 准教授 (70708073)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ガイドツアー / 観光ボランティアガイド / 近代産業遺産 / 日本遺産 / まちあるき |
研究実績の概要 |
主に日本におけるガイドツアーの全体的把握とそれらに関わる研究のレビューを重点的に行った。観光に関するガイドは旅行会社に所属するガイドのほか、外国語ガイドや山岳ガイドなど極めて多岐にわたり、それぞれ独自に発展・変化を経てきた。その中で極めて大きな存在となっているのが地域住民で構成されるボランティアガイドであり、日本では1990年代以降急速に増大している。近年それらを対象とする研究もなされているものの、観光学理論の中に位置づけることはなされていない。そのため、観光ガイドの体系的見取り図を最初に示したとされるE・Cohenの1985年理論を出発点としながら、現代日本における地域住民の観光ボランティアガイドを位置づけた。観光ガイド研究の体系的整理という実績とともに、今後の各地の事例調査による批判的検証に向けた準備とした。 さらに、今後の予備的調査およびその準備として、以下2点を行った。まず近代遺産および住民ガイドに多く関わる「日本遺産」の動向調査である。日本遺産は文化庁が2015年度より開始した認定事業であり、2020年度までに104件が認定された。それらの全体概要をとらえるとともに、その認定に至るまでの過程やその後の事業実践について、近代産業とも関わる旧軍港4市(横須賀・呉・佐世保・舞鶴)を事例に調査した。その結果、地域住民の関わりが相当程度確認できた。また佐世保市において地域住民が関わる実践について、コロナ禍でどのような影響を受けているのかについても調査し、実質的な活動自粛状況があること、のみならず実践者達のモチベーションにも大きな影響が出ていることがわかった。とくに後者の状況は今後のコロナからの回復後の社会において、長期的な影響として出てくることが予測された。いずれも次年度以降の調査の枠組み設定や予備調査として、準備を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は主に文献・遠隔通信による理論研究やレビュー、情報収集といった研究活動を主として行った。2019年度までの全体的状況の把握および理論研究にもとづく視点などの検討はある程度行えたものの、深刻化したコロナ禍により、多くの地域で観光ツアーの実施に大きな制限があり、実施状況の調査では特殊な状況下による影響や調査協力の困難といった問題が生じた。そのため、本来2020年度後半期に行う予定であった事例選定に至る調査が困難となった。2021年度の前半期においてもコロナ禍は継続していくと予測され、予備的調査および文献・遠隔通信による調査にならざるを得ないものと考える。そのため2021年度前半より予定していた、観光客やツアー実践状況に対する本格的な事例調査は同年度後半期から開始することとなる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、地域のボランティアガイド運用に関わる自治体や組織にインタビューやアンケート等での調査を設計し、現状についての実態把握を行う。とくに、今回のコロナ禍により、改めて地域住民が関わる観光ガイドツアーそのものの実施体制には、こうした社会的状況がいかに影響するか、といった点の新たな研究テーマや課題も浮上してきた。ある程度この社会的状況をふまえた研究テーマに微修正することで、現代的な観光状況に適応した研究成果を提示できるようしたいと考える。また、本調査がガイドツアー実施がなされる現場の参与観察を主眼としているものでもあり、その協力はこうした状況下、困難なことも予想される。ある程度協力が得られる地域を優先して、対象地域とテーマとの調整を図りながら、調査実施をしていくことも想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により予定していた現地調査の実施が困難となり、主として文献調査や遠隔通信調査となった。そのため、調査に使用する予定であった機材の一部や旅費、そして調査謝金等の支出が生じなかった。次年度においては、コロナ禍の状況が改善し次第、あるいは協力が得られる対象地域との調整がつき次第、現地調査等を開始し、進めていく予定である。
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