本研究は、生活・環境に視点を置いた特徴的な都市政策を推進する都市を「生活都市」とし、その持続可能な観光の政策として、都市ビジョンと連動した持続的な観光の計画・マネジメントのフレームを検討するものである。 昨年度までに、SDGsに取り組む国内の自治体における観光施策が、地域づくりのビジョンの発信、政策実現に向けた取り組みの推進に果たす役割を把握し、その事例として、金沢市の推進するサスティナブルツーリズムの取り組みを把握し、生活都市としてのビジョンと観光コンテンツの連動と相乗効果を明らかにした。 2023年度は、健康・医療に視点を置いたまちづくりとウェルネスツーリズムなど観光への展開と、観光を通じた都市ビジョン浸透について、海外事例を中心とした調査を行い、全体のまとめを行った。 ドイツ・オーストリア・イタリアのクアオルト地域と温泉保養地については、歴史的経緯や医療としての自然療法に対する制度的な扱いの変化等により、観光施設としての関連施設の活用、自然公園の利用施設や公園施設としての散策路やトレーニング施設の整備、市民のレジャー・レクリエーション施設としてのテルメの発展など、形態が多様であり、地域像の共有やブランディングを支える概念というよりは、都市政策を展開する上での一つのインフラとなっている。また、アジアの都市回遊のトレイルでは、シンガポールのRIR(Round Island Route)、台北の台北大縦走、ソウルの市境を回遊する既存散策路の再整備)を調査し、自然公園や森林の活用とともに、近年の健康ブームや観光客増加に対応し公共交通との接続性を重視するなど、都市と自然のつながりを体感する機会を提供するものとなっている。ビジョンの浸透としては、自然公園的に位置付けられた環境のリブランディングと、新しい都市のライフスタイルの提示として機能していることがわかった。
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