研究課題/領域番号 |
20K12429
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
宇高 雄志 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (80294544)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 世界文化遺産 / マレーシア / オーバーツーリズム |
研究実績の概要 |
研究では2008年に世界文化遺産に登録されたマレーシアの2都市を中心に、長期的な参与観察に基づき、文化遺産の保全と観光、また地域社会が持続的に共存しうる方策を探求する。世界遺産への登録前から現在に至る、観光需要の変動と建造物や土地利用等の経年変化を分析しつつ地域への影響を考察する。ここでは最繁忙期の状況のみならず、閑散期との需要の不均衡にも注目する。これらの分析を通じて同国を含む成長の著しい近隣アジア諸国の歴史都市にみられるオーバーツーリズム現象のモニタリング手法の構築を探求するとともに、これの緩解に寄与できればと考えている。 2023年度は、新型コロナウイルスの影響の緩和により、日本・マレーシア両国の出入国が可能になった。このため現地調査が実施でき、また国内での文献調査も可能になった。この条件下で、2023年度はペナン州での現地調査を実施し、また入手できた文献や統計資料を用いて考察を進めた。現地調査による情報とともに、研究期間で実施予定であった文献調査を前倒しして実施し、同国の社会開発の動向と観光政策の推移を把握できた。またこれまでの年度で収集した観光関連統計を用いて、マレーシア居住者によるアウトバウンド観光の動向分析を実施できた。主な項目は、これまでに現地で得た社会事情とともに観光関連統計を用いて①アウトバウンド成長の背景、②渡航先シェアや旅行支出の動向、③アウトバウンドと国内旅行の関係を捉えた。併せて、ペナン州の現地調査では、主に都心の観光空間化を捉えた。その際には現地の専門機関や専門家と連絡を取り情報交換を行っている。これにより学会発表を行い、また現地調査の結果を盛り込んだに論文素稿を完成させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、新型コロナウイルスの影響の緩和により、日本・マレーシア両国の出入国が可能になった。このため現地調査が実施でき、国内での文献調査も可能になった。この条件下で、ペナン州での現地調査を実施し、入手できた文献や統計資料を用いて考察を進めた。コロナ禍により本研究の主題であるオーバーツーリズムの状況が従前と一変している。一方で前項の「研究実績の概要」に述べた通り、文献や統計資料を用いた考察を行っている。また現地調査による考察を行うことができた。これまで2020年度は①海外からマレーシアを訪問する観光 (インバウンド)客の動向分析を、2021年度は②国内観光客の度動向の分析について学会発表を行った。これに加えて2022年度は③マレーシアから海外を訪問する観光(アウトバウンド)客の動向、また④主要アセアン諸国の観光開発、消費動向を把握できた。また⑤マレーシアの観光開発の動向と制度整備の過程を把握分析しこれらを学術論文として取りまとめ、それぞれに公表できた。2023年度の研究成果として、ペナン州の世界遺産核心領域の居住地を対象に建造物環境の変化とともに観光空間化を捉えた論文草稿を作成した。併せて、現地の専門機関や専門家と連絡を取り情報の交換を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により本研究の主題であるオーバーツーリズムの状況が従前と一変している。新たな考察の観点として、2023年までの様態を総括しつつ、今後のコロナ禍からの回復過程を検証の対象とすることとした。これまでに実施したインバウンド観光、国内観光、アウトバウンド観光、周辺 ASEAN諸国との比較検討はそれぞれ学術論文として完成し発表することができた。また各国の観光資源の整備状況や統計や文献資料を用いた分析を通じて分析したい。 またマレーシアのオーバーツーリズムの事情との比較を行う観点から、アセアン諸国や、わが国を含む東アジア諸国の世界文化遺産も論考の対象に加え、適宜、現地調査を検討したい。2023年度の研究成果として、ペナン州の世界遺産核心領域の居住地を対象に建造物環境の変化とともに観光空間化を捉えた論文草稿を完成させ2024年度中に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、新型コロナウイルスの影響の緩和により、日本・マレーシア両国の出入国が可能になった。このため現地調査が実施できた。国内での文献調査も可能になった。2020~2022年度の間のコロナ禍により調査ができず、予算執行ができなかったため次年度使用の額が生じた。今後の予算の使用計画としては、適宜、現地調査を実施することから進めたい。またマレーシアの研究者を日本に招くことも検討したい。今後の対応については、適宜、経費管理担当者に相談している。コロナ禍等によるさらなる不測の事態が生じた場合、研究計画の変更が可能であること、また現地への渡航を含む研究活動が円滑に実施できず、未執行の予算が生じても研究費の返還が可能であることを確認している。
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