研究課題/領域番号 |
20K12430
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研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
田口 尚史 茨城キリスト教大学, 経営学部, 教授 (60530045)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 世界文化遺産 / ステークホルダー・エンゲージメント / 持続可能な開発 / サービス・ドミナント・ロジック |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世界文化遺産の管理組織(焦点組織)が彼らのステークホルダー(来訪者、取引業者、地域住民、地元自治体など)を文化遺産の保全活動等に能動的にエンゲージメントさせることが、当該文化遺産の持続可能な開発にどのように貢献するのかを解明することにある。 初年度の令和2年度は、理論的な視点から既存研究の文献レビューを行いステークホルダーエンゲージメントの構成概念を体系化し、また実践的な視点からは世界文化遺産の管理状況、来訪者数、関与するステークホルダーの特定を目的として、国内数か所の世界文化遺産の管理組織にインタビュー調査を行う計画であった。 令和2年度の研究の成果として、理論的な視点からは、既存の経営学におけるステークホルダー理論とマーケティング研究におけるエンゲージメント理論をレビューし、リサーチ・ギャップを明らかにした。実践的な視点からは、栃木県や群馬県などの世界文化遺産の管理組織の担当者にインタビューを行い世界文化遺産の保全に関与するステークホルダーを特定し、彼らのエンゲージメント行動を類型化することができた。 これらの研究の成果は、世界文化遺産の保全に関与するステークホルダーの動機を解明するための基礎となることから今後の研究にとって意義のあるものである。具体的には、インタビューの結果から世界文化遺産のステークホルダーのエンゲージメント行動は、増強行動(焦点組織のオファリングを増強する行動)、動員行動(焦点組織に他のステークホルダーを動員する行動)、継承行動(焦点組織へのエンゲージメントを次世代に継承する行動)に類型化されることが明らかになった。特に、継承行動の発見は世界文化遺産の持続可能な開発にとって重要な意味を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界文化遺産の管理組織の担当者へのインタビュー件数が当初の計画よりも少なく,それが計画の遅れにつながっている。新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言の発出によって関東および関西圏への移動が制限され,対面でのインタビューの実施が難しいことが原因である。 Zoomなどを活用したオンラインでのインタビューも考えられるが,被験者側のインターネット接続環境や面識のない者への警戒感などを考慮するとインタビュー可能な文化遺産も限られてしまう。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、引き続き、世界文化遺産の管理組織へのインタビューを行うとともに、他方で、ステークホルダーが世界文化遺産にエンゲージメントする動機を抽出するために世界文化遺産のステークホルダーへのインタビュー調査に着手する。世界文化遺産の管理組織から被験者として協力可能なステークホルダーを紹介いただき、事前に同意を得た上で訪問し、インタビューを行う。インタビューを行う予定の世界文化遺産としては、管理組織については岐阜県や島根県など、ステークホルダーについては奈良県、栃木県、群馬県などを予定している。 新型コロナウィルスの感染拡大の状況によっては、管理組織に対してはオンラインでのインタビューに変更し、ステークホルダーに対しては質問紙調査に変更することで、研究の進捗が遅れないように対応したい。
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