本研究の終了を機に期間全体を振り返ってみたとき、新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響を受け、採用年(2020年度)~(研究期間延長後の最終年度である)2023年度まで研究遂行が極めて困難な状況であったと痛感するものである。特に研究の大きな痛手となったのは、ブライダルツーリズムに必要な要件を探ることを目的に予定していたフィールドワークが、感染拡大を封じ込めようとした日本政府の強力な行動制限によって(長期にわたり)実質的に不可能な状況が続いたことであった。それは、現地のインタビューを通じて獲得が期待された”肌感覚による覚知”が、ほとんど得られないという状況をもたらしたのである。 2020年度の研究初年度以降、新型コロナウイルスの拡大と収束の状況から、年度初めに研究計画の見直しを精力的、あるいは柔軟に行ってきたが、世界的規模での蔓延状況は瞬間瞬間で各国の感染拡大防止措置に影響を与え、我々の研究遂行に大きな障害をもたらしたのであった。 翻って研究最終年度である2023年度は、5月8日に新型コロナウイルス感染症の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」になったこと受けて国内・海外移動制限が解除され、これまで実施することができなかった各地のフィールドワークが解禁となった。本年度我々は、これまで抑制してきたフィールドワークを実施した。遅れを取り戻そうと懸命に研究に取り組んだが、当初計画で期間前半での実施を予定したフィールドワークが最終年度にずれ込んだことで、獲得した情報の検討・吟味に十分な時間を割くことができなかった。このことは我々にとって痛恨の極みである。
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