研究課題/領域番号 |
20K12443
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
森重 昌之 阪南大学, 国際観光学部, 教授 (20611966)
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研究分担者 |
海津 ゆりえ 文教大学, 国際学部, 教授 (20453441)
敷田 麻実 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40308581)
内田 純一 小樽商科大学, 商学研究科, 教授 (40344527)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 観光 / ガバナンス / 観光ガバナンス / 観光まちづくり / 地域外関係者 |
研究実績の概要 |
本研究は、①地域外関係者の地域社会へのかかわりのメカニズムの解明、②地域外関係者の地域再生への貢献メカニズムの分析、③地域再生への地域外関係者のかかわりの促進プロセスの分析を通して、「かかわり合う地域社会」の理論化と政策的実践の検討を進めていくものである。3年目となる本年度は、昨年度コロナ禍で実施できなかった各地域のフィールドワークを精力的に実施し、知見の蓄積を図っていった。また、各研究者のフィールドワークの成果を共有し、理論化をめざすための共同研究会を2回、オンラインにて開催した。 フィールドワークでは、昨年度に引き続き、北海道釧路市において行政が実施する長期滞在事業の参与観察のほか、長期滞在者への聞き取り調査を行った。また、沖縄県石垣市白保地区において、地元宿泊事業者や移住者への聞き取り調査を通じて、来訪者の受け入れのしくみに関する調査も実施した。さらに、冬期に沖縄県名護市で長期滞在する人びとへの聞き取り調査も実施し、釧路市との比較分析のための基礎資料を収集した。 一方、共同研究会は昨年度まで関連分野の専門家を招聘し、一定の知見を収集できたことから、今年度は研究者の成果の共有へと軸足を移した。1回目(11月)は多様な地域外関係者に対して地域側はどのように向き合うか、どのように接点を築くかについて検討した。2回目(3月)は経済的取引と互酬的取引の間にある関係性の取引について、経済人類学を援用するなど、理論化に向けた可能性について議論した。 なお、北海道釧路市ではコロナ禍においてもある程度フィールドワークを実施でき、一定のデータを蓄積できた。そこで、7月に観光学術学会大会で成果発表を行った。また、2月に釧路公立大学地域経済研究センターが主催する第2回地域経済セミナーにて、これまでの研究成果の一部を発表し、市民に向けた成果の公表・還元を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究はフィールドワークを中心とした事例研究によって知見を蓄積し、共同研究会を通してそれらを共有・精査することで、理論化と政策的実践をめざしている。今年度は、昨年度まで実施できず、延期になっていた沖縄県石垣市白保地区をはじめとするフィールドワークを精力的に実施できたほか、新たに沖縄県名護市の長期滞在者への聞き取り調査も実施できた。本来であれば、今年度は現地調査で得た知見をまとめ、地域社会と地域外関係者の関係性構築による地域再生の理論化と政策的実践に取りかかる年度であった。しかし、これまで遅れていたフィールドワークが中心となってしまい、理論化に向けた議論や知見の共有・精査が予定通り進められなかった。 このことから、本年度の研究は遅れていると評価できる。そこで、本研究は当初今年度が最終年度であったが、1年間研究期間を延長し、これらの遅れを取り戻すための調査・研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長した次年度は、すでに着手している北海道釧路市のほか、北海道小樽市、鹿児島県奄美群島、沖縄県名護市、沖縄県石垣市白保地区などで追加のフィールドワークを実施し、理論化に向けた知見や情報を収集していく。 また、本研究のもう1つの柱となる共同研究会については、フィールドワークで得た成果の共有・精査と理論化に向けて積極的に議論していく。特に、各事例の比較分析を通して、多様な地域外関係者の受け入れパターンや地域社会と地域外関係者の関係性の構築、ガバナンスの実践に向けた議論し、理論化と政策的実践に結びつけていく。 同時に、調査を通して得た成果を観光学術学会や日本観光研究学会、日本計画行政学会などの関連学会で発表し、専門家の幅広いレビューを受けることで、多様な視点から分析を行うとともに、成果の発信・還元を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、当初は昨年度までにおおむねフィールドワークを終了し、今年度は研究成果の共有や理論化に向けた議論を予定していた。しかし、コロナ禍で調査対象地の受け入れが困難になるなど、フィールドワークが十分に進められず、研究が2年ほど遅延した。昨年度からようやく一部のフィールドワークを再開できたが、今年度で後れを取り戻すことができなかった。次年度は今年度できなかった補足的なフィールドワークを実施するとともに、理論化に向けた議論を行う共同研究会を開催予定である。また、研究成果を発表するための学会発表なども予定しており、これらにかかる経費が次年度に繰り越されることになるため、使用額が生じている。
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