研究課題/領域番号 |
20K12457
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
堀内 真由美 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60449832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フェミニズム / ブラック・フェミニズム / 西インド諸島労働移民 / ウィンドラッシュ世代 / ウィンドラッシュの娘たち / カリキュラムの脱植民地化 / ウィンドラッシュ・スキャンダル / ジャマイカ |
研究実績の概要 |
今年度も、昨年度に引き続き、コロナ禍中における海外渡航及び対人による学会活動ができなかったため、主にこれまで収集した資料の精査と新たに科研費で購入できた資料からの情報整理を行なった。また、メールやズームを手段として、研究対象地域からの情報や助言を駆使し、今後の計画を立てることに力を注いだ。 一方、コロナ禍によって生じた在宅ワークの時間を最大限利用し、今年度は、これまでの研究の蓄積と、新たに築いた海外ネットワークの恩恵を、一冊の著書にまとめることができた。『女教師たちの世界一周―小公女セーラからブラック・フェミニズムまで』(筑摩書房、2022年2月)では、一昨年度末にジャマイカでインタヴューすることができた英領西インド移民2世の女性(「ウィンドラッシュの娘たち」)の、本国イギリスでの体験や、関わった女性運動、「ブラックの歴史」を一から構築した女教師時代の奮闘などを盛り込むことができた。 本書によって、本研究の目的である、世界的規模で進行しているヒトの移動に伴い発生する諸問題を、19世紀から今日に至るまでのおよそ150年間のイギリスにおける事象を通して浮かび上がらせることができた。とりわけ第二次世界大戦直後からイギリスが西インド植民地から招き入れた労働移民の、本国イギリスでの差別と抑圧の体験を、一人の実在の女教師の半生を通して描けたことは意義あることであった。 幸いにも、本書は、新聞1紙、経済雑誌2誌から取材を受けた。日本ではあまり知られていない、イギリスにおける移民女性の活動の一断面を紹介することで、日本の状況を喚起させる機会を提供することに一程度の効果があったと確信する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で、本研究の主たる調査先であるイギリス(連合王国)とジャマイカほか西インド諸島への出張がまったくできなかった一方で、これまで収集した資料や築いてきた人的ネットワークを介して、最新の歴史解釈や現代史における新情報を得ることができた。また、その恩恵の1つとして、本研究の主題を含む著作を刊行できた。このことから、本研究課題の進捗状況は、「おおむね順調である」とする。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年にあたる次年度は、コロナ禍の収束状況を見つつ、できればイギリスおよび旧英領西インド諸島への資料調査と聞き取りを実施したい。 次年度中に海外渡航が可能になれば、本研究の主体である「ウィンドラッシュの娘たち」、すなわち、西インド諸島からの労働移民二世にあたる女性たちへのインタヴューも含めた、より広範囲な調査を行いたい。 次年度も引き続き、海外渡航が不可能な場合には、インターネットを介して、調査先の協力者、図書館、資料館などとの連絡を密にして、資料や情報の収集にあたる予定である。 渡航が可能でも不可能でも、これまで明らかにしてきた「ウィンドラッシュの娘たち」の思想と運動を整理し、その全体像に少しでも近づくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、年度内2回実施を予定していた海外への資料調査ができなかったため。また国内での移動も、リモートによる研究報告会に変更されたこともあり、本研究2年目に予定していた移動に伴う旅費の出費がゼロとなったため。 未使用額については、次年度、再び海外渡航が困難になれば、主に西インド大学編集の、旧英領カリブ海から発信される歴史・文化情報雑誌を数か年分遡って購入する予定である。
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