セクシュアル・ハラスメントや性暴力問題について、女性のエンパワーメントによる解決を進めるための比較社会学的研究として、2023年度は、スコットランドおよび韓国で調査を行い、とりわけ「女性の安全」の保全および危機についての研究を行った。調査地選定の理由は、スコットランドにおいては世界に先駆けてトランスジェンダーの権利擁護の法制化が進展し、一面では女性の安全が後退しているとも懸念されているからであり、韓国はそうした世界の趨勢と別の方向性がフェミニズムの中で模索されているからである。 具体的には、スコットランドにおいては、Glasgow Women`s Library のダイレクターと面談するほか、スコットランド国会図書館において資料調査を行うとともにScotland Lesbianグループの主要メンバーにインタビューを行い、法制化が進んだスコットランド政界の事情を把握、女性たち、とくにレズビアン女性やムスリム女性への影響について把握した。 ソウルにおいては、トランスの権利を推進する側および懸念する側の両方の中心人物たちに事情を聴取するとともに、アカデミアにおいてフェミニズム理論研究を行う研究者との意見交換を行った。とくにソウルでは、これまで歴史的に性暴力と闘ってきた女性運動の蓄積が現在のフェミニズム運動につながっていること、しかしながらそれとアカデミアのフェミニズム研究が必ずしも連携していないことがわかった。 以上の研究成果は、日本女性学会大会パネル報告等で報告した。
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