研究課題/領域番号 |
20K12465
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
寺村 絵里子 明海大学, 経済学部, 教授 (70598870)
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研究分担者 |
大石 隆介 明海大学, 経済学部, 准教授 (90735359)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 男女間格差 / 就業行動 / 業務自動化 / RPA / コース別雇用管理制度 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の金融機関で進捗しつつある人口知能(AI)の活用及びロボットによる業務自動化(RPA)の進展と、これらの業務改革が当該機関の女性労働者の雇用に与える影響について検証を行い、男女間格差を可視化することを目的とする。 特に日本特有のコース別雇用管理制度を堅持してきた日本の金融機関は、AI・RPAによる業務改革とコース別雇用管理制度の見直しを行っている。これらの動きは、雇用におけるジェンダーギャップをより可視化させるであろう。本研究を通じ、そのジェンダー格差と推移を検証する。 2020年度については公的統計による当該業界の雇用の現状を把握するとともに、上記に関する独自の質問紙調査を実施し、さらに金融機関で働く女性10名に対しデプスインタビューを実施した。質問紙には2020年におきたCovid-19による雇用への影響に関する関する設問も加え、調査を実施した。分析の結果、銀行業においてAIとRPAによる人員減はまだ起きていないものの、特に女性一般職に関して職務の配置転換などが積極的に実施されていること、女性労働者について男性労働者よりも自身の職務に関する不安をより抱えていることがわかった。 これらの分析結果をもとに2件の国際学会発表と3本の論文執筆を行った。いずれも研究分担者の協力を得て英語論文を執筆し、うち2本の論文については海外ジャーナルに投稿活動を行っている。残る1本も執筆を進め、まずはこの3本の論文を形にすることを目標としている。最終的には、これらの成果に加え日本語による書籍化も検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度についてはデプスインタビュー、質問紙調査ともに順調に行うことができ、必要なデータを収集することができた。さらにこれらの分析結果をもとに2件の国際学会発表と3本の論文執筆を行うことができた。いずれも、日本の労働市場とジェンダー格差に関する内容であり、世界的にみても遅れがみられる日本のジェンダー平等の現状について査読者の方からも関心を持っていただくことができた。 新型コロナの影響により、国際学会はいずれもオンラインによる発表となった。また対面による国際学会参加がかなわず、人脈形成等に課題が残されたものの、研究成果としては形を残すことができた。 3本の論文執筆についてはうち2本を海外ジャーナルに投稿中である。もう1本については2021年度にかけて執筆を進め、あわせて海外ジャーナルに投稿を予定している。研究分担者の協力を得ながら英語論文執筆を進め、日本の労働市場とジェンダー格差について広く世界に発信したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度については二度目の質問紙調査を実施し、データをパネル化してより査読に耐えうるデータ構築を進める予定である。質問紙調査は、既存の公的統計や二次分析データでは得られない設問を含むため、独自調査を継続する。また、新たに日経NEEDSのデータの提供を受けることも検討している。AIやRPA、コース別雇用管理制度の変更が女性一般職にどのような影響を与えているかを引き続き分析する。さらに、企業業績と銀行業における女性活躍推進の関係についても検証をしていきたい。 さらに、2020年度から積み残しとなっている3本の論文を見直し、形にしたいと考えている。これらの活動を通じ、本科研のテーマである日本の労働市場とジェンダー格差について、さらに検証を行っていく予定である。 研究分担者の協力により英語論文執筆を主に進めているが、最終的には日本語による書籍化も検討している。日本企業独自の人事制度が女性労働に与える影響について、広く研究成果を日本でも発信したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は主に質問紙調査代金と英文校正代に費用を計上したが、主に出張代が新型コロナの影響で計上がなかったため、次年度に繰越とした。
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