研究課題/領域番号 |
20K12469
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
宮崎 あゆみ 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (90750216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / セクシュアリティ / LGBTQ / いじめ / 言語 / 青少年 / 暴力 |
研究実績の概要 |
本研究は、LGBTQの青少年に対するいじめや暴力が、どのようにジェンダーやセクシュアリティを通じて構築されるのかについて、言語研究の概念と理論を用いて分析することを目的としている。2021年度においては 、 2020年度に引き続き、 国内外のいじめ、暴力、ジェンダー、セクシュアリティに関する先行研究の収集と分析を行った。昨年度は日本および欧米の社会学、教育学、心理学などにおける膨大な量のいじめや暴力研究の傾向を広く探ったが、2021年度には、ジェンダー、セクシュアリティいじめと暴力を分析するための理論や概念について検討した。具体的には、男性性研究、女装研究、トランス研究、言語理論文献をレビューし、複雑な男性性を読み解く道具として近年注目されているHybrid masculinities(混合男性性)概念について調査し、それを土台に英語論文を執筆した。 また、得られた理論的枠組みを利用して分析を行い、2つの国際学会(社会言語学シンポジウムSociolinguistic Symposiumおよびアメリカ人類学会American Anthropology Association Conference)で発表を行った。次に、コロナ禍で対面インタビューが困難だったため、昨年に引き続き、いじめやLGBTQ青少年によるyoutube channelなどのSNS発信に注目し、豊富なメディア資料の収集を行った。さらに、暴力の形態や影響、および暴力からの立ち直り過程について、複数の専門家に聞き取りを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度には、教師や教育関係者、東京都教育相談センター、性暴力支援センター、いじめや暴力の被害者など幅広くインタビューを行う予定だったが、コロナ禍のために対面での調査が引き続き困難であった。そのため、インタビュー調査は次年度に延期をすることにし、2021年度においても、文献調査、理論や概念の整理、メディア資料の収集、専門家への聞き取りを中心に研究を行った。英語論文および2つの国際学会(社会言語学シンポジウムSociolinguistic Symposiumおよびアメリカ人類学会American Anthropology Association Conference)発表を行い、研究成果を発信することはできた 。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、コロナ禍のために昨年度までに履行できなかった聞き取りやインタビューを行い、いじめや暴力がどのような言語実践によって生み出され、被害者や関係者によって対処されるか、ジェンダーやセクシュアリティの観点がどのように関連しているのか、被害者はどのようにジェンダー・セクシュアリティいじめの経験を捉え、乗り越えているかについて調査・分析を行う。具体的には、教師や教育関係者、東京都教育相談センター、性暴力支援センター、いじめや暴力の被害者など幅広く聞き取りやインタビューを行う。インタビュー協力者は数名確保しているが、スノーボール・サンプリングやLGBTQ学生組織、LGBTQ支援団体、ジェンダーセンター、以前調査を行った女装カフェ・男装カフェなどから広げていき、様々なジェンダー境界に生きる若者たちに協力を求めていく。対面調査が最良であると考えてはいるが、今年度においてもコロナ禍のために対面インタビューが難しい場合は、 Zoomなどオンラインでのインタビューを行いたい。また、文献収集や分析も、関連領域が多岐にわたるため、本年度においても引き続き行いたい。調査の分析結果は、社会言語科学会、文化人類学会、社会学会、英国日本研究学会 (British Association for Japanese Studies Conference) にて発表の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には、教師や教育関係者、東京都教育相談センター、性暴力支援センター、いじめや暴力の被害者など幅広く聞き取りを行う予定だったが、コロナ禍のために対面での調査が困難になった。そのため、謝礼やインタビュー起こしの費用を繰り越すこととなった。また、2021年度には、コロナ禍のために帰国が困難になって海外での滞在が長引き、図書費や消耗品費などを処理するのが困難であり、申請できなかったものが多かった。さらに、2021年度は、米国コロラド大学における国際学会発表に参加予定であったが、コロナのために 渡米の許可が下りず、オンラインでの参加になり、渡航費を使用することができなかった。今年度は、英国における国際学会などで発表の予定であり、2021年度の使用できなかった旅費を使用する予定である。
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備考 |
招待発表:Miyazaki Ayumi, "Normes de genre au Japon: Education, travail et famille (日本のジェンダー規範:教育、労働、家族), Lycee Maison Familial Rurale
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