研究課題/領域番号 |
20K12477
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂東 希 大阪大学, 人間科学研究科, 特任講師 (60388626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 逆境的小児期体験 / 児童自立支援施設 / 非行 / トラウマインフォームドケア |
研究実績の概要 |
児童自立支援施設の女子児童を対象にしたトラウマ心理教育プログラムを開発することを目的に、初年度は子どものトラウマ体験の安全かつ適切な把握に着目し、以下の調査研究を行った。 1)逆境的小児期体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)の把握方法等に関する文献収集と整理を行った。欧米では主に医療分野におけるスクリーニングの導入についての議論が展開されており、その意義と弊害についての文献整理を行った。これらのデータをもとに、現在文献レビューを執筆しているところであり、2021年度に投稿する予定である。 2)ACEsやトラウマインフォームド・ケア(TIC)について収集したデータをもとに学会シンポジウムにて発表し、国内の非行・犯罪領域におけるTIC導入に向けた取り組みについて情報収集し、国内の関係者と意見交換を行った。また、近接領域として、性犯罪行動を有する成人のACEsを把握する調査研究を実施し、結果を学会にて発表し、アセスメントと介入におけるACEs把握の意義について考察を進めた。 3)児童自立支援施設の職員を対象としたACEsに関する伝達研修を実施し、その前後で職員を対象とした質問紙調査を実施した(①研修前; n=30、②研修直後; n=31、③研修終了から3か月後; n=27)。調査の結果から、同施設でのACEs把握の実態や、入所児童のACEsやトラウマ体験を把握することに関する職員の認識と研修後の認識の変化、入所児童のACEsの把握やトラウマ反応等への対応に関する苦慮や工夫等が明らかになった。これらのデータは次年度も引き続き収集し分析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は、非行・犯罪領域におけるACEsの適切な把握方法やトラウマインフォームド・ケアの導入状況について情報収集し整理することであった。海外での視察調査などは新型コロナウィルスの影響によってかなわなかったものの、海外文献の収集と整理は進んでいる。また、すでに構築された研究協力機関とのネットワーキングにより調査への協力が得られ、児童自立支援施設の職員を対象としたACEsに関する伝達研修の実施ならびにアンケート調査などを初年度に実施することができた。これらを踏まえるとおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に収集・整理した文献をもとにレビュー論文をまとめ、国内外におけるACEs研究やTIC導入状況等について引き続き情報収集を行う。児童自立支援施設におけるACEsの把握に関する施設職員からの聞き取り調査(インタビュー調査)については可能な方法で実施する予定であり、初年度の質問紙調査の結果を参考に、より具体的な実態把握を試みる。児童自立支援施設における心理教育プログラムの開発については、新型コロナウィルスの影響によって、施設内でのプログラムの試行実施が困難となる可能性があるため、状況によっては、心理教育ツールの開発と職員向けの研修プログラムの開発などに変更するなどの修正が必要となるかもしれない。また、海外における若者を対象とした実践施設における視察についても、同様の理由で、オンラインで受講できる研修等に変更する必要が生じるかもしれないが、それ以外については、おおむね当初の計画通りとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により海外調査等が実施できず、初年度の計画を一部変更したため。国内外の先進事例の情報収集にかかる旅費またはオンラインによる学会・研修参加費などに充当する。
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