研究課題/領域番号 |
20K12482
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
岩瀬 彰宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60343919)
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研究分担者 |
堀 史説 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20275291)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルミ合金 / イオン照射 / 電子線照射 / 強度改質 / 電気伝導度改質 / EXAFS測定 |
研究実績の概要 |
Al-Cu2元合金とAl基実用合金の1つであるジュラルミンを用いて、高エネルギーイオン照射(5MeV Al, 2MeV He, 16MeV Au)と2MeV電子線照射を実施した。照射前後の評価は、イオン照射試料については、マイクロビッカース硬度測定、放射光によるEXAFSスペクトル測定により、また、電子線照射試料については、マイクロビッカース硬度測定、引張強度試験により行った。希薄合金の結果と比較するため、FeやZrを主成分とする高濃度合金(金属間化合物)についても、イオン照射実験と硬度測定を実施した。 得られた結果について示す。16MeV Auイオンの室温照射によるAlCu合金のEXAFSスペクトル変化をFEFFによるシミュレーション結果と比較したところ、イオン照射により、微細なCu析出物ができていることが分かった。この析出物が硬度増加の要因と思われる。5MeV Al, 2MeV Heイオン照射によっても同様な硬度増加がみられたが、硬度の深さ分布には、イオンの飛程に応じた差異が見られた。一方、電子線照射をジュラルミンに対して行った場合、室温、100℃における照射では、硬度の変化は見られず、125℃以上での照射で硬度増加がみられた。特に150℃照射では、50近いビッカース硬度上昇が得られた。電子線照射の場合、格子欠陥生成率がイオン照射と比べて小さいため、Cuの析出を起こすには、室温での格子欠陥の熱拡散では不十分であり、温度を上げて熱拡散を高めてやる必要があることを本結果は示す。 電子線照射はバルク試料全体に影響を及ぼすことができる。そこで、厚さ1.5mmの試料を150℃で電子線照射し、引張強度測定を行った。その結果、0.2%耐力は照射量とともに約450N/平方mmまで増加することがわかった。バルク試料における強度制御を行えたことは、実用に向けて大きな前進であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
covid-19の影響は2020年度に引き続き大きく、現所在地の敦賀から大阪市内(大阪府大)への研究打ち合わせや各種実験のための出張が制限されたことなどにより、2021年度に予定していたAl合金に関する研究の1部を遂行することができていない。また、発表を予定していた国外での国際学会も、その多くが2022年度以降に延期されたため、参加・発表ができなかった。これらの要因により、2021年度に計画していた研究計画の遂行に若干のおくれが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、Al合金関連の研究のうち、前年度までに遂行できていない部分の研究の続きを実施するとともに、当初予定していたCuTi合金に関する実験を行う予定である。2022年度もcovid-19の影響はまだまだ避けられないと思うが、効率的な実験計画をたてて研究に臨みたい。また、国内学会については、平常に戻る方向にあり、また国際学会も、ハイブリッド開催が予定されているので、できるだけ参加・発表し、本課題の研究結果に関してアピールし、多くの専門家と意見を交わすようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19による影響のため、大阪府大における研究打ち合わせや各種実験が制限されたため、当初予定していた研究の一部が遂行できなかった。さらに、予定していた国際学会が次年度以降に延期されたため、参加や発表ができなかった。そのために次年度使用額が生じた。2022年度は、次年度使用額を、2021年度までに計画されていて遂行できていない研究のための消耗品、旅費などに充てるとともに、次年度助成金は、研究計画にある「CuT合金のイオン照射、電子線照射」研究を遂行するための消耗品や旅費、学会発表のための旅費、滞在費などに使用する予定である。
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