研究課題/領域番号 |
20K12482
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
岩瀬 彰宏 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 客員教授 (60343919)
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研究分担者 |
堀 史説 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20275291)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 銅合金 / 電子線照射 / 強度改質 / 電気伝導度改質 |
研究実績の概要 |
昨年度までのAl合金(Al-Cu2元合金、ジュラルミンなど)における研究に引き続き、当該年度は、Cu-Ti合金における研究を実施した。Cu-Ti合金は、高温での熱処理により、優れた強度、電気伝導度をしめすことから、種々の電子デバイスに用いられる。 本研究では、純銅、純チタンをArガス中で高周波溶解し、圧延したのち溶体化処理して均質組成としたCu-4at.%Ti合金を、2MeVの電子ビームで、従来の熱処理で用いられる温度(450℃程度)よりもはるかに低い200℃で照射し、ビッカース硬度と電気伝導度の電子線照射量依存性を求めた。また、Ti原子周辺の原子配列の照射による変化を見るため、放射光を用いたEXAFS測定も実施した。 得られた結果は次の通りである。電子線を1.2e18/cm2照射したときの電気伝導度は、純銅の11%に達し、ビッカース硬度は155程度に増加した。同程度の温度での熱時効では、同じ時間におけるプロセシングでも、電気伝導度、硬度ともほとんど変化せず、低温における電子線照射の優位性が示された。照射試料を電子顕微鏡を用いて観察したところ、微少なTi析出物が観測された。これは、電子線照射による照射促進拡散によるものと考えられる。Ti原子の析出によりCuマトリックス中のTi濃度が減少したことで、電気伝導度が増加し、また、Ti析出物により転位の運動が妨げられたため、硬度が増加したものと考えられる。 以上の実験は、真空中での照射で実施したものであるが、より実用展開を目指すため、大気中における簡便な照射法も併せて試みた。 以上の稀薄合金の結果と比較・考察するため、ZrやNiを主成分とする高濃度合金についても、イオン照射実験と硬度測定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に続き、当該年度においてもcovid-19の影響はあり、研究打ち合わせや加速器実験のためなどの出張が制限されることによって、2022年度に予定されていた研究の一部を遂行することができなかった。このため、研究遂行に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今までは、試料を真空中に置いた状態でイオンや電子を照射してきたが、この方法では、作業に手間がかかり、効率が悪いため、実用には向かない。そこで、今後は、大気中で電子線を照射することで、合金の強度や電気伝導度を向上させる方法に取り組み、本研究を実用展開できる方向に持っていく予定である。 また、本研究で得られた成果を学会で発表し、補助事業期間内に論文を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19による影響のため、研究打ち合わせや各種実験が制限された。その結果、当初予定していた研究の一部が遂行できなかった。そのために次年度使用額が生じた。2023年度は、次年度使用額を、2022年度までに計画されていて遂行できていない研究のための消耗品、旅費、施設使用料、論文掲載料、学会参加費などとして執行する予定である。
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