研究課題/領域番号 |
20K12488
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
植木 悠二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (50446415)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 放射線グラフト重合 / 機械学習 / 重合予測 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、高分子改質手法である放射線グラフト重合技術に統計解析手法などの機械学習を融合することにより、基材や薬品の分子情報などを基に重合収率を予測可能な解析手法の開発を目的としている。本年度(R3年度)は、前年度に構築した機械学習用データセットを用いて、放射線グラフト重合における重合収率の予測モデルの開発を試みた。 本研究ではメタクリル酸エステル系モノマーを用いた電子線エマルショングラフト重合反応をモデル反応として設定した。学習データには、分子構造の異なる41種類のメタクリル酸エステル系モノマーを用い、テストデータには8種類の未知のメタクリル酸エステル系モノマーを用いた。機械学習に組み込む説明変数は、前年度に量子化学計算により導出した49種類の説明変数とし、また、目的変数は実測により取得した重合収率とした。アルゴリズムが及ぼす予測精度への影響について検討した結果、グラフト重合収率の予測においては、アンサンブル学習用アルゴリズムであるXGBoostやランダムフォレストにより開発した重合収率予測モデルが線形重回帰分析用アルゴリズムにより開発したモデルよりも高い予測精度を示した。また、開発した重合収率予測モデルを解析し、予測重合収率に及ぼすモノマーの物性情報の影響度を解析したところ、モノマーの「分極率」と、モノマーの置換基近傍にある酸素原子(O2原子)の「NMR化学シフト」がグラフト重合反応の鍵となる重要説明変数であることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画に基づき、実測によるグラフト重合収率の取得、量子化学計算によるモノマー構造の数値化、機械学習用データセットの構築、機械学習を活用した重合収率予測モデルの開発、及び、重合収率予測の鍵となる重要説明変数の解明を達成したことから、概ね順調に研究は進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度までは、モノマー構造の違いが及ぼす重合収率への影響度を検討するために、モノマー構造に焦点を絞り説明変数を導出するとともに、重合収率の予測モデルの開発を試みた。R4年度は、グラフト重合条件が及ぼす重合収率への影響度を検討するために、照射線量、薬品濃度、温度などの各種実験条件(プロセス因子)を説明変数とする重合収率予測モデルの開発を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室で既に所有していた物品(試薬等)を有効活用することにより、当初の予算から減額することができ、次年度使用額が生じた。また、無理して使い切るのではなく、次年度の予算と合わせて使用した方が効率的であると判断したため。 本研究を遂行するためには、モノマー類などの試薬、及び、グラフト重合実験用器具などの消耗品類が必要であり、それらの購入に充当する。また、得られた研究成果を論文投稿や学会発表するための費用などに使用する予定である。
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