研究課題/領域番号 |
20K12493
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
古賀 康彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10533862)
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研究分担者 |
佐藤 隆博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子ビーム科学部門, 研究統括(定常) (10370404)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特発性肺線維症 / 特発性間質性肺炎 / PIXE / シリカ / 環境 / PM2.5 |
研究実績の概要 |
特発性肺線維症は呼吸器疾患の中で最も予後不良な疾患で、その発症および進行メカニスズムは明らかになっていない。 本研究計画において我々は、環境からの吸入シリカが肺線維症の肺内に多く蓄積していることで肺線維症が進行し、予後不良な転帰をもたらしていることを世界で初めて示す事に成功した。 本研究では、診断目的に手術で切除された特発性肺線維症患者さんの21例の肺組織に含まれる元素の高感度分析を、in-air micro-PIXE(大気マイクロ粒子線励起 X線分析と呼ばれるイオンビーム装置を用いて行った。対照群として早期肺癌の正常肺のマージナルな肺組織を用いた。本研究から、コントロール(対照)肺と比較して特発性肺線維症の肺組織中にシリカが多く含まれ、肺組織中のシリカが多ければ多いほど、肺線維症の年間努力性肺活量の減少及び特発性肺線維症の疾患進行のスピードが早いことが明らかとなった。さらに、肺内のシリカの含有量が多い特発性肺線維症では、少ない症例と比較して生存期間が短いことが判明した。また、肺組織の病理学所見とin-air micro PIXEによる元素分布の2次元マッピングとの比較では、 粒子状に観察された結晶性シリカが肺胞腔ではなく、間質部分に多く集積していることも明らかになり、結晶性シリカの大きさも数ミクロン程でありPM2.5と同程度の大きさであった。なお、過去の研究報告からは珪肺症などのシリカ吸入と肺癌との発症リスクについては因果関係が乏しいことが示されており、早期肺癌は本研究の対照群として妥当であったと思われた。本研究計画の遂行により、シリカを含む環境因子が特発性肺線維症の病態に関与していることが明らかとなり、本研究結果により環境暴露に対する公衆衛生学的な予防の対策や結晶性シリカに対する治療介入の新たな戦略の道筋が示された。
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