研究課題/領域番号 |
20K12496
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
古田 雅一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40181458)
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研究分担者 |
朝田 良子 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60546349)
土戸 哲明 大阪府立大学, 研究推進機構, 客員教授 (50029295)
坂元 仁 大阪府立大学, 研究推進機構, 客員研究員 (40570560)
高松 宏治 摂南大学, 薬学部, 教授 (70272151)
桑名 利津子 摂南大学, 薬学部, 講師 (50330361)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 複合殺菌 / 量子ビーム / 精油 / 過酢酸 / スポアコート / 細菌芽胞 |
研究実績の概要 |
殺菌処理に対して強い抵抗性を示す細菌芽胞の発育には、発芽,発芽後成長から栄養増殖に至る特徴的な増殖過程を液体培養時の濁度のモニタリングにより確認し、DNA修復欠損株を用いて殺菌処理が芽胞の発育のそれぞれの過程にどのように影響するかについての検討を開始した。 加熱処理と香辛料の一種、タイムの精油成分thymolについては加熱処理は発芽過程を最も強く抑制し, thymolは発芽とともに栄養増殖過程を抑制することを見出した。 一方、ガンマ線は芽胞の発芽に対し抑制効果がなく、発芽後成長と栄養増殖に関しては、ガンマ線による抑制効果が確認でき、特に栄養増殖は低線量でも顕著な効果が見出された。 さらに過酢酸処理とγ線照射による内膜やその内膜に多くが存在する発芽システムへの影響、また、スポアコートの各殺菌処理に対する防護機能についてスポアコート・発芽関連遺伝子の欠損株を用いて詳細に検討したところ、γ線についてはスポアコートの有無、発芽システムには直接的影響を与えず、過酸化水素はスポアコートの有無が殺菌効果に影響し、スパアコートに存在するSH基との相互作用により、過酢酸の殺菌からの防御に役割を果たしていることが示唆された。ガンマ線はゲノムDNAに対し直接・間接的に作用することで切断し、芽胞の発芽後成長ではDNAの修復が行われること、栄養増殖ではDNAの合成が行われることから、ガンマ線照射芽胞からDNAを抽出しアガロースゲル電気泳動によりDNAの二本鎖切断と修復の状況を検討中である。 さらに先行研究では、加熱処理時にチモールを同時に存在させることで相乗効果があることを見出しました。またゲノム損傷が細胞致死の原因であるγ線と紫外線(UV-C)との併用処理においても相乗効果がの可能性が見出されたので同じ発育過程に作用する処理同士を同時に処理することで、殺菌の相乗効果が発現される可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のせいで学内の試験研究活動が年間を通じて制限されたせいで確実な成果を確定するために必要な実験データの取得が不十分となった。特に電気泳動によりDNA切断と修復をモニター、DivSal法など損傷菌の評価法を用いた複合殺菌法の効果の検証が進まず、放射線照射後の芽胞の耐性と発芽及び対数増殖期に至るまでにおける細胞形態の細胞膜機能の修復およびDNA修復機構に解析し、関係する遺伝子発現との関係の評価も目標に達しない状況であった。 さらに共同研究者とのコミュニケーションもコロナ禍のために阻害され、蛍光色素染色(Propidium iodide:細胞損傷評価 FDA:発芽胞子の生理活性の指標、MitoTracker Green:細胞膜染色による細胞分裂評価。など)により芽胞の発芽増殖過程の細胞活動の変化を可視化し、顕微鏡観察により放射線照射後の芽胞の顕微鏡観察下における形態の変化や,染色性,発芽後増殖までの過程の解析も進まなかった。 最終年度である2022年度においてはこれらの遅れを取り戻すべく最大限の努力をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前項に述べた遅れている課題を更に効率的に推進するために、特に現在興味深い予備データが得られている増殖曲線から得られた芽胞の発育過程の個々の段階に対する殺菌処理の個別解析をさらに進め、また分担研究者とともに蛍光色素染色による芽胞の発芽増殖過程の細胞活動の変化の可視化による殺菌作用機構に関するさらなる知見の取得に努めたいと考えている。これらの研究を加速するために実験補助員も雇用し、実験の効率化を図る予定である。また学会や学術誌に対し、成果発表を積極的に行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために研究機関同士の内外の活動と出張が制限され、物品の使用量が少なく、物品購入経費の支出、旅費の支出が予測より小さくなった。
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