研究課題/領域番号 |
20K12497
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松井 利之 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (20219372)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 照射誘起強磁性 / イオン注入 / 磁性ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
研究初年度においては,予備実験の成果も活用しながらクラスターイオンビーム照射による深さ方向に対する傾斜的磁気機能付与プロセスの定量的評価を進め,クラスターイオン照射による傾斜磁気機能改質機構の解明に取り組むことを予定していたが,COVID-19の影響により,イオン種を変更した照射実験等が計画的に進まず,新たなデータを蓄積することが困難な状況となった.一方で,過去に実施した,Cクラスタイオンを用いた照射誘起強磁性材料に対して,放射光を用いた深さ分解X線磁気円二色性XMCD)測定実験に関する評価を実施し,クラスタイオンサイズ,エネルギー等に対する照射誘起強磁性の定量的解析を進めた.その結果,クラスターイオン数に依存した深さ方向に対する定量的な磁気構造を明らかにすることができ,論文執筆に向けてさらに詳細を検討中である. また,これらの試料に対し,熱処理を加えて更なる構造制御を進めるための知見を得るために,熱処理効果に対する実験を実施し,熱処理温度,時間を制御することにより,照射量を制御した試料の磁性をより詳細に制御することができることを明らかにし,その成果を学術論文として発表した. 加えて,3次元磁気構造の一部を担うと同時に,キャッピング層やボトム層としても機能する新物質の開拓を目指し,SiO2に磁性イオンをインプランテーションし,その磁気構造を制御する検討も新たに模索する検討を開始した.今年度は,Ag-Ni複合ナノ粒子の析出挙動についての検討を行い,X線小角産散乱等の手法より,その構造解析を実験を行った.その結果,照射注入条件に依存し,複合粒子の組成比を有意に変化させることに成功し,磁性の制御に結びつける可能性を示唆することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響もあり,外部機関での実験が計画どおり進まず,新たなデータの蓄積が行えず,進捗がやや遅れている状況である.ただし,これまでの結果の詳細な解析実験を進めたことなどで,新たな知見等も得られている.また,先行的に将来の磁気構造構築に向けた員プランテーション実験等を開始した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,クラスタイオン照射によるFeRhの照射誘起磁性を深さ方向に制御し,傾斜機能を持たせた新たな磁気機能薄膜を製作するための設計指針を確立することを目指し,評価解析を進める.あわせて,昨年度から開始した,磁性イオン注入したSiO2に対する磁性制御に関する検討も同時並行で推進し,FeRh層と複合化させた状態での磁気デバイス構築に向けた検討も進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により,外部機関での研究が計画通り実施できず,消耗品,旅費等の執行計画が予定通り進められなかった.また,国際会議による成果発表を予定したが,関連する会議が中止となった.これらの額は,次年度に繰り越し外部機関での実験等も進める計画である.
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