研究課題/領域番号 |
20K12500
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
堤 康宏 立命館大学, 理工学部, 助教 (50734943)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射線検出 / 微弱光検出 / 光スペクトルの赤方偏移 / 位置検出器 |
研究実績の概要 |
放射線治療の需要の高まりにより、人体内の線量分布を正確かつリアルタイムに計測する技術の開発が望まれている。本研究は、光スペクトルの赤方偏移に基づくファイバ型位置検出技術を用いて、小型で柔軟性が高い線量分布モニタを開発することを目指している。 今年度は、受光部の光利用効率の向上に取り組んだ。シンチレーションファイバから出射した光をダイクロイックミラーで波長分離し、それぞれをシリコン光電子倍増管で受光する構成について検討を行った。まずは、光線追跡シミュレーションソフトLightToolsを用いてダイクロイックミラーの選定およびそれぞれの光学素子の配置について検討を行った。次に、シミュレーション結果に基づいて光学素子を実装した。まずは、暗室内で放射線の代わりに、紫外レーザ光でシンチレーションファイバを発光させ、受光部の幾何学的効率を測定した。その結果、従来の分光器を利用した構成に比べて、本構成では光利用効率が向上していることを確認できた。さらに、紫外レーザ光パルスがシンチレーションファイバへ入射する位置を変えて測定を行い、2つのシリコン光電子倍増管の出力信号の比から紫外レーザ光パルスの入射位置の検出が可能であることを実証した。以上の測定では、紫外レーザへの印加電圧を測定器の同期信号としていた。放射線計測時には、放射線が入射するタイミングは不明である。したがって、雑音と放射線による信号を区別するため、2つのシリコン光電子倍増管に同時に光パルスが到達したときにだけ測定を行う同時計数法に基づいた測定についても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シンチレーションファイバ、ダイクロイックミラーおよびシリコン光電子倍増管を用いた構成により、受光部の光利用効率の向上に成功した。また、当初の計画通り、放射線の代わりに紫外線ビームを用いた実験で、位置検出器の原理実証にも成功した。以上の結果から、概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に作製した位置検出器による放射線検出の動作を実証する。自然光下での実験のため、装置を暗箱に実装し、シンチレーションファイバも遮光を行う。実装の形態は、放射線測定時のSN比に影響するため、ノイズレベルを明らかにしておく。放射性同位元素からのガンマ線やベータ線を利用して放射線検出の実証実験を行い、試作した検出器の性能を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的な感染拡大の影響により、参加を予定していた国際会議がオンライン開催となり、宿泊費や移動費が不要となった。さらに参加費も無料となった。また、2021年度より研究代表者の所属が変更になることが決まった。そのため、これまで利用していた所属研究室の機材などについて、再度検討する必要があった。 今年度の使用額と合算し、光学部品,試料などの消耗品などに使用し,有効活用する。
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