研究課題/領域番号 |
20K12501
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
平出 哲也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (10343899)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水 / OHラジカル / 水クラスター / スピン相関 / スピン交換反応 / ポジトロニウム |
研究実績の概要 |
令和2年度に計数率の向上を行った、陽電子消滅寿命-運動量相関(AMOC)測定装置を用いて、大気に解放された純水の測定を行ってきた。生体中の水をターゲットとしているため、大気中のガスが溶け込んだ状態での測定を行う必要があると考えている。10℃以下ではOHラジカルの長距離拡散が抑制され、かご効果によりスピン相関のある電子が存在するOHラジカルと三重項ポジトロニウムとのスピン交換反応で一重項ポジトロニウムへの変化する確率の増大が明確に現れ、10℃で水クラスターの形成が起こることを示してきた。このかご効果の存在は、一重項ポジトロニウム収率を増大させるため、水クラスターの存在を示すことができる。現在、AMOC装置実験室に空調トラブルが発生し、AMOC実験は中断している。 これまでの実験で観測されているクラスター構造の出現には水中の二酸化炭素の影響が存在する可能性があると考え、pHの変化を測定することで、ある状態で10℃以上でクラスター構造が維持される可能性があることが明らかになってきた。 今年度はこのクラスター構造が消える温度域におけるガスの放出に着目し、圧力計や二酸化炭素センサーなどを導入して実験を行っている。二酸化炭素センサーを用い、二酸化炭素放出挙動を調べるための装置の構築を行い、測定を開始した。AMOCの測定結果と比較検討しながら実験を進めており、相関がある可能性が示されている。 系統的なデータを取得し、論文等、外部発表を積極的に行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、当初計画していた調査などを実施できなかった。現状、実施可能な研究内容から対応している。研究に使用する一部装置の予期せぬトラブルが発生したこともあり、当初計画に対しては、やや遅れているという状況にある。その間、新しい実験装置を構築し、研究を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に対して遅れている会議参加や研究協力者の研究室を訪問して行う調査等を、新型コロナウイルス感染症の感染状況が収束後に実施する予定であったが、実現できなかった。それ以外で実施可能な研究内容から進めることとし、研究を進めてきた。トリプルコインシデンス測定であるため計数率が問題であったAMOC測定装置の高計数化を実現し、水の構造変化をOHラジカルの拡散から見出すことに成功し、OHラジカルの拡散だけでなく、水の液体構造に関しても研究対象を広げ、研究を実施している。AMOC実験装置のトラブルで、AMOC測定の実施は遅れているが、その間、液体構造の変化に起因する水からのガス脱離測定装置の構築を行い、実施してきた。また、現在は二酸化炭素濃度を二酸化炭素センサーを組み込んだ装置を開発し、測定を開始している。今後もこれら実験を継続して実施し、当初の予定通り、食塩水の測定も実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、予定していた調査等が出来なくなったため、研究計画自体に遅れが出て、予算の執行も遅れている。また、会議参加に係る費用が繰り越されている。令和6年度は本研究に関連した国際会議が金沢で開催されるため、次年度使用額は金沢で開催される会議の参加費、旅費等として使用し、成果発表を行う予定である。
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