研究課題/領域番号 |
20K12511
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
西内 信之 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (70301588)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ユーザ体験 / 人工知能 / 機械学習 / UXカーブ / 顔表情 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、時系列の主観評価スコアとしてUXカーブに着目し、UXカーブのデータを用いて、ユーザ体験のモデル化と総合評価の推定を人工知能により試みることである。更に、UXカーブの代わりに、ユーザ体験と強い相関があるとされる生体情報の1つである顔表情に着目し、時系列の顔表情スコアから、ユーザ体験のモデル化と総合評価の推定が可能であるかを検証する。以上の目的を果たすために、本研究の研究実施計画として以下の目標AおよびBを設定した。目標Aでは、人工知能を用いて、時系列の主観評価スコア(UXカーブ)から、ユーザ体験をモデル化し、総合評価スコアを推定することが可能であるかを検証することとした。条件として、ユーザ体験の各ステップは、全てのユーザが全てのステップを体験しているとは限らず、また、その順番はユーザによって異なっている状況を対象とした。目標Bでは、人工知能を用いて、時系列の生体情報(顔表情)から、ユーザ体験をモデル化し、総合評価スコアを推定することが可能であるかを検証することとした。条件として、ユーザ体験の各ステップは、全てのユーザが全てのステップを体験しており、その順番は全てのユーザで同じである状況を対象とした。以上の目標を遂行するための具体的な年間計画としては、2020年度前期に、先行研究調査、顔画像処理の調査、顔(表情)画像処理アルゴリズムの検討、2020年度後期に目標Aの実験計画、顔(表情)画像処理アルゴリズムの検討の継続、を予定していた。本年度の進捗状況としては、年間計画の内容は全て予定通り遂行した。また、本年度の年間計画に加えて、目標Aに関連した内容として、機械学習による総合評価スコアの推定精度改善の検討を行った。以上の本年度実施した研究内容に基づいて、2件の国内学会発表、1件の国際会議発表、2件の国際ジャーナルへの投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度の年間計画として、前期は、先行研究調査、顔画像処理の調査、顔(表情)画像処理アルゴリズムの検討、後期は、目標Aの実験計画、顔(表情)画像処理アルゴリズムの検討の継続としていた。本年度の進捗状況としては、年間計画の内容は全て予定通り遂行した。目標Aの実験計画では、東京都立大学大学院システムデザイン研究科情報科学域の修士学生1名が、実験でのデータ収集を担当することが決定し、具体的な実験計画を検討した。目標Bに関連する顔(表情)画像処理アルゴリズムの検討では、市販ソフトウエアも視野に検討を進めたが、オープンソースプログラムFacial-Expression-Kerasが高い認識精度であったため、これを採用することとした。また、目標Bについては、採用した顔表情認識プログラムを用いて予備的な実験を実施した。 また、本年度の年間計画に加えて、以下の機械学習の推定精度改善の検討を行った。本申請課題を実施する準備段階として、目標Aに関連して、ユーザ体験の各ステップが全てのユーザにおいて同一の順番で、且つ、ユーザは全てのステップを体験しているという条件の研究を実施しており、学会発表(日本人間工学会関東支部第49回大会,2019年12月)を行っていたが、推定精度が約60%と改善の余地があった。そのため、本年度は推定精度の改善として、機械学習に用いたデータ数が50であったのものを、オーバーサンプリング手法を採用してデータ数150に拡張し、更に機械学習アルゴリズムについては、サポートベクターマシンのみであったものを、7つの機械学習アルゴリズムを用いて推定精度を計算し、それらを比較検証した結果、推定精度93%まで改善することができた。以上の機械学習における推定精度改善のプロセスについては、目標Aを遂行する上で適用可能なものであり、本申請課題で提案する手法の有効性を高められると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の年間計画では、前期に、目標Aの実験データの収集、人工知能によるデータ解析、後期に、目標Bの実験計画、人工知能によるデータ解析の継続、を行う予定としている。 目標Aの実験データ収集については、2020年度の実験計画の検討において、実験参加者を集めて対面での実験実施を予定しているが、対面での実験実施が難しい状況となった場合は、オンラインでの実験データ収集とする。具体的な実験タスクとしては、ECサイトを利用して定められたジャンルの商品の購入を決定してもらうようなタスクを想定している。人工知能によるデータ解析については、2020年度に検討した推定精度向上のプロセスを適用し、オーバーサンプリング手法の適用、複数の機械学習アルゴリズムによる推定精度の比較を行う。 目標Bの実験計画については、既に2020年度の段階で、予備的な実験を実施しているため、予備実験で明らかになった検討すべき点を踏まえて具体的な実験内容の検討を行っていく。2020年度の予備実験では、情動を喚起する映像視聴をユーザ体験とみなして実験タスクとして設定し、実験参加者にはコメディとホラーの映画をそれぞれ12分間視聴してもらっていた。2021年度に検討すべき点として、映像視聴の時間の延長、ジャンルの異なる映像の視聴、機械学習の際の学習データ(顔表情データ)の分割方法などが挙げられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が発生したため、次年度使用額が生じた。
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