研究課題/領域番号 |
20K12512
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
長野 和雄 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (90322297)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 椅子 / 座面素材 / 座面湿度 / むれ感 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、被験者実験により得たむれ(物理量)及びむれ感(心理量)が、室内温湿度や座面素材の諸物性値とどう関連しているかを明らかにすることにより、これらの物理量からムレ及びムレ感の程度を推定する評価モデルを確立することである。 初年度は、人工気候室にて2020年11月~2021年1月に健康な男子大学生・院生20名を被験者に実験を行った。被験者の着衣を綿製の半袖シャツ・半ズボン・下着・靴下(0.41clo)とし,冬季室内としてはやや高めの気温25℃,湿度50%,気流を静穏に保った実験室に入室し,30分間立位安静を保った。その後,実験用椅子に着き椅座位姿勢を90分保ち実験終了とした。椅子には水之江忠臣デザインの図書館イスを採用し,座面の張り地を水分移動特性の異なるウール・アクリル・PVCの3条件とした。 その結果,大腿後皮膚温は3条件とも着席直後から上昇勾配が実験終了の90分後までに3℃弱まで上昇した。条件間の差は一貫して0.1℃以下と小さかった。大腿後水蒸気分圧も3条件とも実験終了まで上昇を続けた。その勾配はウールで最も緩やか,次いでアクリルで,PVCでは他の2条件と比べ明らかに急であった。大腿後快適感は着席直後には3条件とも快適側であるが,実験終了までに徐々に不快側に転じた。PVCが一貫して他2条件よりも不快側にあるがその差は小さく,3条件間で有意差はなかった。大腿後むれ感は,3条件とも着席後10分頃までむれを感じず,その後むれ感が生じる。そのむれ感の程度はウール・アクリルに比べPVCの方が大きかった。 先行研究ではむれに関する物理量と心理量の関係は必ずしも明確でなかったが、本研究では座面湿度とむれ感の間に正の相関関係が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響により、一部の測定実施が遅れている。 具体的には、令和2年度中に椅子の物性値の測定を終える予定であったが、一部の測定にとどまっている。 また、本研究では各年度とも、むれが発生しやすい夏季と発生しにくい冬季に分けて被験者実験を実施する予定であったが、緊急事態宣言が重なり、令和2年度の夏季の実験がかなわなかった。 一方、採択時の研究計画では1年につき1素材のみ検討することとしていたが、令和2年度に実施した冬季実験では、種々工夫を施すことで、同時に3種の素材の実験を行うことができた。その点については前倒しで実施できているので、全体としてみればわずかな遅れに留められている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年夏季に、令和2年度冬季実験と同じ3座面素材条件について、被験者実験を行う予定である。新型コロナの影響も心配されるが、検温およびアルコール消毒を徹底しており、被験者となる学生に対し登校禁止等の厳しい規制が敷かれない限り、実施可能と見込まれる。 椅子座面の水分移動特性に関する諸物性値を得る実験を令和3年度も継続する。 得られた物性値と、座面温湿度やむれ感との関係を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響を受け、令和2年度は被験者実験を予定の半分しか実施できず、被験者謝金の執行も半分にとどまったことによる。また、椅子座面の物性値測定に用いる椅子を予定の全種類ではなく一部に留めたためである。 令和3年度には、感染防止対策を徹底し、令和2年度中に実施できなかった分を実施し、そのために繰り越した分を被験者謝金と椅子の購入に充てる計画である。
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