研究課題/領域番号 |
20K12516
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
三上 浩司 東京工科大学, メディア学部, 教授 (10386782)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動的難易度調整 / メタAI / レベルデザイン / ゲームデザイン / 生体情報 |
研究実績の概要 |
2021年度は,2020年度の既存のゲームにおけるメタAIの利用方法の調査と,メタAIのモニタリング部分となる,ゲームプレイヤーの感情を推定する手法について,プレイ中に発する音声とプレイヤーの心拍数に重点を置き,データ取得のためのプロトタイプの構築を進めた.音声は「ユーザーローカル」のAPIを利用し,プレイヤーの発話から感情を推定するプロトタイプの実装を進めた.心拍数の取得に際しては,当初はマウス型の計測装置の利用を想定したが,プレイ中にプレイヤの手から離れることで計測が中断されることが危惧された.また,入手が困難でもあったため,コロナ禍においても比較的容易に装着が可能で,精度が高いスマートウォッチ型の計測機器をテストしている.ゲームエンジンにおいて計測結果を逐次取得可能な通信方式として「ANT+」規格の機器に着目し,リアルタイムでの心拍数の取得方法を実験している. 感情マップと推定システムの試作については,海外のゲーム開発事例が紹介されている「Gamer's Brain」を参考に調査を進めた.プレイヤーの感情の変化(情動)とゲームデザインにおいて,開発者が想定しているプレイヤーの感情についてが示されており,一般的な人間の感情をすべてではなく,ゲームの中で扱うべき感情を限定してマップ化していくことで,より明確な感情の変化に応じたレベルデザインが可能になることが明らかになった.また,この調査をもとにプレイヤーの感情の変化をパラメーターとして扱うプロトタイプを開発した.この成果はNICOGRAPH Internationalにおいてポスター発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,既存のゲームにおけるメタAIの利用方法の調査と,メタAIのモニタリング部分となる,ゲームプレイヤーの感情を推定する手法について調査が進んだ. また,生体情報のひとつである,発話時の音響的特徴量を利用して,プレイヤーの感情を推定する方法については先行研究の事例を参考にゲームの敵キャラクターの挙動に変化を与えるシステムを実装,実験することができ,これを発展応用できる状況にできた. 一方で,他の生体情報として候補に挙げた心拍数のリアルタイム計測が,想定していた機器の販売終了に伴い入手困難になったことや,計測データの不備が多く発生する懸念があったことから,別な方式の検討をせざるを得なくなった. また,多次元的な感情マップの検討部分について,先行研究の事例を調査するにとどまり,新たな手法を考案するには至っていないため,上記の自己評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
既存のゲームにおけるメタAIの利用方法の調査と,メタAIのモニタリング部分となる,ゲームプレイヤーの感情を推定する手法については調査研究を継続する.ゲームプレイ中のプレイヤーの感情を随時取得するための手法については,音声と心拍数を採用する方向で進める.これに加えゲーム内のログ(プレイヤーが敵を倒した数や,受けたダメージ量,取得したアイテム,所用時間など)を組み合わせることで,プレイヤーの感情推定を行う.2022年度には,これらのデータをもとに実際に感情マップと推定システムを試作する. 最終的にゲームのどのような部分に変化を加えるべきかについて,初年度の成果から,必ずしもユーザーに気づかれない調整だけでなく,調整に気づかれたとしても,ユーザーの体験価値を損なわない可能性が示唆された.2022年度は,テストのために実装するゲームの設計なども踏まえ,動的なレベルデザインの方法について引き続き議論を続けていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は初年度に調査用機器,2年目に開発機材の導入を予定していた.コロナ禍に伴う供給不足などにより調査用機器と開発機器を兼ねた機器を2021年度に導入した.また,調査用として次世代ゲーム機の導入を予定していたが,流通不足のため導入できずにいる.さらに,当初参加予定であった国際会議はコロナ禍によりオンラインでの開催となり,海外旅費の未使用が生じた. 次年度はコロナ禍の状況を見て,AAAIやGDCなどの国際会議に参加する予定にしている.渡航が困難な場合はオンラインで参加する.また,開発並びに実験に耐えうる機器の導入を予定している.
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