2020,2021年度は以下の3つの研究を並行して行った。 A.曲線の数学的分析:透視投影,円筒投影,球面投影により得られる各透視図の相互関係を求めた。また極小曲面を特徴づける平面曲線を定式化した。さらに城郭石垣の反り曲線を表す数式を再定義し,彦根城石垣における写真測量結果との比較によってその有効性を示した。B.曲線に対する注視行動の調査:愛知県北設楽郡豊根村富山地区内の3地点において,アイカメラを装着した被験者が,山並みのスカイラインを観察する実験を開始した。またこれら3地点と,『熊谷家伝記(宮下本)』に登場する地名との関係を示すとともに,当地域のGISデータの整備も実施した。C.曲線・曲面の建築設計への応用:マルチユーザ型仮想空間を活用し,曲線,曲面をもつ大規模建築の設計案の検討を試みた。 以上の研究成果を踏まえ,最終年度の2022年度は以下の研究を行った。 A.Eularの離散弾性曲線による定式化:研究代表者が以前行った,手づくりの桟瓦のキーラインの定式化の研究を発展させ,離散平面曲線をEularの離散弾性曲線により定式化する方法を発表した。B.注視行動と文献の調査およびGISデータの整備:前年度に引き続き,アイカメラを装着した被験者計11人がスカイラインを観察する実験を,計3日にわたり行った。また実験を行った3地点と,『熊谷家伝記(佐藤本)』に登場する地名との関係を示すとともに,「宮下本」との相違の有無を明らかにした。さらに,研究分担者がこれまで実施した他地域でのGISデータの構築の成果も参照し,研究対象地域の過去のGISデータの整備を進めた。C.曲線・曲面の建築設計への応用:研究代表者が以前行った丸子船の写真測量の研究を発展させ,スマートフォンのカメラを使って,特別なキャリブレーションなしに,丸子船の形状を測定,再現し,その曲線や曲面を建築設計に活用する方法を発表した。
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