研究課題/領域番号 |
20K12523
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研究機関 | 福岡看護大学 |
研究代表者 |
門司 真由美 福岡看護大学, 看護学部, 准教授 (80527002)
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研究分担者 |
庄山 茂子 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (40259700)
青木 久恵 福岡看護大学, 看護学部, 教授 (70526996)
三好 麻紀 福岡看護大学, 看護学部, 准教授 (00595259)
窪田 惠子 福岡看護大学, 看護学部, 教授 (20309991)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 病院食 / トレイ / 赤のトーン / 味覚 / 食の印象 / 皿の形状 / 量感 / デルブーフ錯視 |
研究実績の概要 |
食欲を増進させる食環境の要因として、トレイの「色彩」に着目した。色相赤のトレイは、老若男女問わず病院食の印象評価が高いとされているが、赤のトーンを変化させた場合の味覚やトレイの印象の違いについて明らかにされていない。そこで、20~30代女性30名を対象に10トーンの赤と無彩色のトレイに病院食を載せた 11サンプルの写真から受ける印象について調査した。味覚的印象について、甘味は薄い赤や柔らかい赤、酸味は明るい赤、苦味は暗い灰みの赤、辛味は濃い赤で感じられたため、食欲増進を図るには、患者のニーズに応じたトーンの赤を選択する必要性が示唆された。因子分析で得られた「食の安全性と雰囲気」、「食の魅力」、「食の楽しみ」の3因子を満たすトレイは、薄い、柔らかい、浅いトーンの赤であった。これらは、トレイ色として推奨できることが認められた。 次に、食欲の低下した人に食事の量を少なく、美味しそうに感じさせる要因として「食器」の形状や大きさに着目した。大きさの異なる「丸皿・リム無」、「丸皿・リム有」、「正角皿・リム無」、「正角皿・リム有」の皿にハンバーグを盛り、量感(大きさ)や美味しさ感などの印象に違いがみられるか検討した。デルブーフ錯視の効果により皿の直径および1辺に対するハンバーグの直径比が0.45~0.55付近を境に、大きい皿ほどハンバーグは小さく見え、小さい皿ほど大きく見えると評価された。同じ大きさの皿では、リム有よりリム無の方が、正角皿より丸皿の方が、ハンバーグはやや小さく見えると評価された。ハンバーグの大きさ(量感)、完食しやすさ、バランスの良さ、美味しさの4項目の評価が総じて高い皿は、「丸皿・リム無」の直径比0.50、0.55、「丸皿・リム有」の直径比0.40、0.45、「正角皿・リム有」の直径比0.45であった。皿の形状や大きさにより量感・美味しさの印象が異なることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、入院患者や高齢者を対象に、トレイ色が食の雰囲気や嗜好、食の環境に関する印象に及ぼす影響や、皿の形状の変化が食事の量や美味しさの印象に及ぼす影響について調査を行い、入院患者の食欲促進につながる効果的な「トレイの色彩」や「食器の形状」を明らかにすることを目的としている。2020年度は、高齢者の男女と20~30代の男女を対象に調査を実施し、2021年度は、20~30代の女性が抱く味覚的印象や病院食の印象(食の雰囲気や嗜好、食の環境に関する印象)について分析を行った。2021年度は、入院患者を対象とした調査は実施できなかったため、2022年度に予定していた「食器の形状」についての調査を実施したことから、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、病院食を載せたトレイに対し、味覚的印象と病院食の印象評価について、20~30代の若年女性と若年男性、高齢者の女性・男性を対象に調査を実施した。 2021年度は、色相赤の明度と彩度を変化させた赤色トレイに対し、20~30代の女性が抱く味覚的印象や病院食の印象評価(食の雰囲気や嗜好、食の環境に関する印象)について分析を行った。 今後は、若年男性を対象に、赤色トレイの明度と彩度を変化させ、味覚的印象と病院食の印象評価についての調査データの分析を行う。その後、高齢の男女比較を行い性差がみられるか明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、予定していた入院患者を対象とした質問紙調査が実施できなかったためである。今後、COVID-19の感染拡大の状況をみながら入院患者を対象に調査が可能であれば調査を行う。その際の、印刷、補助者の人件費として使用する。さらに、2022年度に高齢者と20~30代の男性を対象に調査したデータを分析し、その結果を学会発表や論文投稿するための費用として使用する。
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