本研究は、2D/3Dデジタル造形技術を駆使して、地域社会が有する歴史的造形資源の活用を図り、当該地域を持続的に活性化するための方策を明確化することを目的としたものである。特に千葉大学が位置する千葉県ならびに東京都墨田区を中心として、当該地域に存在する歴史的造形資源の造形データを取得・保存するとともに、取得したデータを活用する一連のデザイン実践を行い、そのあり方を見出すことを目指した。特に、本年度にあっては、前年度までに取得した歴史的造形資源の造形データをさまざまに活用する取り組みを行った。 本年度、歴史的造形資源の3D造形データの活用に関して実施した取り組みには以下がある。たとえば、市原市埋蔵文化財調査センター(現市原歴史博物館)との協働においては、同センター(同館)において、歴史的造形資源の活用に関する下記の取り組みを行った。(1)歴史的造形資源を生活者らが身近に体験できるよう多様な種類の縮減模型を制作した。(2)上記(1)の歴史的造形資源の縮減模型を活用して体験型ワークショップや触れる展示などの社会実装を行い、当該地域の生活者らが歴史的造形資源への認識を高めるための活動を多様に実施した。なお、千葉大学墨田サテライトキャンパスや神奈川県川崎市に位置する子之神社においても上記と同様の取り組みを行った。 歴史的造形資源の2D造形データの取得・保存・活用に関しては、千葉県と協働して、同県における代表的な資源である万祝の型紙の造形データを活用したワークショップを複数回実施し、多数の県民らに同資源を共有した。 いずれの取り組みにおいても、アンケート調査などを実施し、歴史的造形物の2D/3Dデジタルデータを取得するプロセスならびにそれらの活用が当該地域の資源への生活者らの認識を高め、持続的な地域活性化に寄与し得ることを明確にした。
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