研究課題/領域番号 |
20K12528
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
高田 宗樹 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40398855)
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研究分担者 |
杉浦 明弘 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 講師 (00528630)
木下 史也 富山県立大学, 工学部, 講師 (20800907)
松浦 康之 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 講師 (30551212)
高田 真澄 四日市看護医療大学, 看護医療学部, 講師 (50760998)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 仮想現実 / ユニバーサルデザイン / デザイン評価 / 数理モデル / 応用数学 / ヒューマンコンピュータインタラクション / データサイエンス / 衛生学 |
研究実績の概要 |
前年度の計機の整備に加えて、「高齢者のための立体映像デザイン及びその評価に関する研究」を実施する上で必要な簡易脳波計の調達・調整を行った。特に、本脳波計では7項(現在までの進捗状況)で述べる覚醒度に従って心理的負荷を評価する他、左右脳の活動バランスを記録することを計画している。その上で以下の題材について研究を行い、それぞれの事項を明らかにした。 (1)立体映像視認時における視線軌跡と重心動揺の関係性:視覚入力と出力としての姿勢維持制御の関係に着目した。健常若年者を対象に、立体映像視認時の視線運動と重心動揺を同時計測することで、映像酔いの機序の詳細を解明することを目的としている。GVS印加等による酔いの軽減について検討しており、追加実験を行っている。 (2)HMD映像の身体影響に関する研究:(1)に加えて、視野領域のサイズや視標速度に着目した。健常若年者を対象に、VR視聴時の身体状態を、重心動揺検査、心電図検査、NIRS検査を用いて多角的に評価した。その結果、視野狭窄の影響あるいは、視標の速度の違いにより脳内の伝達経路あるいは、活性部位に変化などが見られた。特に、視野狭窄時の映像視聴が生体に与える影響は殆ど検討されておらず、今回得られた結果は、今後研究を発展する上で、重要な方向性を得ることが出来た。 (3)立体映像視認時における視線運動の年齢間比較に関する研究:若年者と高齢者における立体映像の認知に特有な視線運動の特徴を捉えることを目的とし、視線運動の計測を行った。その結果、年齢の違いにより、視線の運動量に変化が見られた。高齢者は、加齢に伴い周辺視の固視微動の振幅が大きくなるため、若年者の視線運動に比べ視線の動きが大きくなると考えられる。 (4)以上に関連して、最新の数理科学や人工知能を利用した生体信号の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下のような研究の進捗性から(1)と判断できる。 (0)計機の整備:「高齢者のための立体映像デザイン及びその評価に関する研究」を実施する上で必要な簡易脳波計(ニューロスカイ株式会社)の監修を行った。 (1)脳波については、α波の強度(Meditation)Mとβ波の強度(Attention)Aを算出することにより、覚醒度: (A-M)/(A+M)についても解析している(高田ら,2019)。この指標は、正値で値が大きいほど覚醒度が高く、眠気が少ないことを示す。ストレスなどの心理的負荷が緊張感と関係があるような範囲では、不安時には眠気がなくなり、覚醒度が増加すると考えられる。心理状態がこれらの指標で記述できる可能性がある。 (2)若年者を対象として周辺視を指示し、これまでの研究で開発した2D映像視認時における脳血流動態を、fMRI(日立MRイメージング装置ECHELON Smart, 岐阜医療科学大学)で測定を行っている。加算処理を行うため、ブロックデザインによる計測パラダイムに従って実験解析を行っている。 (3)生体時系列を生成すると考えられる数理モデルを理解する上で、そのシステムを記述するための独立変数の数に関する推定は重要である。非線形なシステムに対する次元推定の手法はいくつか提案されており、その一例として誤り近傍法(False Nearest Neighbors)法が挙げられる。FNN法における問題を克服するために、新しい統計を入れて、生体時系列データ一般に適応しており、当該研究のデータ解析にも適用可能である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)視線軌跡と重心動揺の関係性:コヒーレンス解析の結果から、3D映像視認時では、いずれの例においてもゲインの評価対象となった。次に、伝達関数解析の結果から、2D映像に比べ3D映像視認時にゲインが増大することが示された。また、追従視に比べ周辺視のゲインが増大することが示された。周辺視の場合、HF成分の周波数帯におけるゲインが増大しており、副交感神経活動もゲインと連動して亢進していることがうかがえる。3D/周辺視の組み合わせは、映像酔いを引き起こしやすいことが知られており、映像酔い発症時にゲインが増大するものと推察される。今後は、負荷画像の制御パラメータや酔いを軽減させる信号を入力とし、上述の生体信号を出力とする伝達関数解析を行い、酔いやその軽減に関するメカニズムを検討する予定である。 (2)若年者および高齢者を対象として周辺視を指示し、これまでの研究で開発した2D映像や視野狭窄映像の視認時における脳血流動態を、fMRI(日立MRイメージング装置ECHELON Smart, 岐阜医療科学大学)で測定を行うことを視野に入れる。その場合、基本的な生理活動を司る小脳、中脳などの脳基底領域への影響についても探索する。ここでは、計測が簡便にできないため健常者に限り、例数を大幅に減じて実施する。加算処理を行うため、実験プロトコルにも十分に配慮する。 年齢層による比較を行うことで、脳内の視覚情報処理に関する変容を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表コロナ禍の影響で国際会議参加のための外国旅費が不要になったため。この余剰予算については、成果発表をまとめる際に解析補助等のための人件費に充てる他、論文掲載料 に使用する予定である。。
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