研究課題/領域番号 |
20K12530
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高安 啓介 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70346659)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グッド・デザイン / ソーシャル・デザイン / クリティカル・デザイン / スペキュラティヴ・デザイン / 未来研究 |
研究実績の概要 |
2020年6月28日に日本デザイン学会 第67回春季研究発表大会における発表「思弁デザインはいかなる未来を描くのかー未来の分類による省察」において、未来研究でなされてきた未来の分類をめぐる議論にもとづき、思弁デザインの未来観について検討をおこなった。2020年8月に意匠学会の学会誌『デザイン理論』76号に「良いデザインと評価の問題」を発表した。本論において、社会デザインの評価について問うとともに、何かあるものを良いかどうか定める、判定としての評価にたいして、何が本当に良いのかを問い直すような、批評=批判としての評価をみずからおこなうデザインとして、批判デザインについて論及した。2020年9月19日の美学会西部会にて「製品デザインにおける徳の美学」と題して研究発表をおこなった。本発表では、良いデザインの要件として、誠実・正直・謙虚といった徳の概念がもちだされることに注目し、製品デザインにおける「徳の美学」を明らかにしたが、この考えにたいする批判として、アンソニー・ダンの批判デザインの主張を取り上げた。ダンがそこで最適化のイデオロギーともに問題にするのは「親切さ」の徳である。ダンは、電子機器にもとめられる使用者への「親切さ」を、物の存在を忘れさせる「透明な」関係として理解する。電子機器について懸念されるのは、製造側の巧妙な意図に、使用者がそれと知らずに、身体感覚まるごと「隷属させられる」危険があるところである。ダンはそこで、使用者にたいして「不親切な」電子機器の例をあげて、奇妙なものこそ美的経験とともに覚醒をうながすことを説いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
良いデザインgood designの考えに対抗するデザインとして批判デザインcritical designおよび思弁デザインspeculative designをとらえて考察を進めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
社会デザインsocial design の歴史的展開について調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張が中止になったため繰り越しが発生した。本年度もこの状況が続くため、オンライン学会の参加(および実施)に必要な電子機器、パソコンなどの購入にあてることとする。
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