本研究は、市民視点からの地方行政サービス改革に関するデザイン研究である。市民が直面する行政の課題を、行政側の業務にどうつなげるか、デザイン学の観点から現状を調査し、社会実験を行うことで、行政サービス改革に必要な要件を明らかにすることを目的とする。以下の3領域で、デザイン思考を応用した社会実験による実証的な開発と検証を行った。1)市民側領域:多様な市民や外部専門家を包括する共創ネットワークによって構成される共創プラットフォームの構築。2)行政側組織領域:現状の行政業務の重複や未着手業務に対応する柔軟な組織横断プロセスの構築。3)行政側人材領域:課題発見型スキルを育成する行政むけデザイン思考人材育成プログラムの開発。である。福津市をフィールドとして進めた。 今年度は、1)の市民側領域として、これまで研究として福津市とデザインを進めてきた子育てサービスマップ(2020)、子育てガイドブック(2021)をもとにDXとの共創プラットフォームの構築を進めた。 調査の結果、市民から見た場合、デザインした紙媒体と既存のホームページやアプリとの情報連携に課題があることがわかった。また忙しい保護者はホームページよりもアプリをメインにチェックしていることがわかった。そこで、アプリとホームページの棲み分けを明確化する調査を行った上で、ホームページとアプリのデザイン改修を行った。市民への情報発信方法を同じポリシーで統一を図ることができた。また、2)の行政側組織領域として、「子育てサービスを広域でデザインする」と題し、同じ医療体制を共有する隣接する古賀市、宗像市などの市民や行政関係者を対象に柔軟な組織横断プロセスの構築のための広域連携の可能性を探るセミナーを3回実施した。 さらに3)の行政側人材領域として、福津市職員を対象に、子育てにおける市民視点をテーマとするデザイン思考人材育成プログラムを2回実施した。
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