研究課題/領域番号 |
20K12536
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
杉森 順子 桜美林大学, 総合研究機構, 教授 (00559891)
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研究分担者 |
永野 佳孝 愛知工科大学, 工学部, 教授 (40610142)
荒川 俊也 日本工業大学, 先進工学部, 教授 (50631248)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プロジェクションマッピング / フォトリアル / FPGA / 幾何補正 / ブレンディング / メディアデザイン / 映像デザイン / アプリ開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自由曲面を持つ立体物に簡単な操作で、どの角度から見てもフォトリアルに見えるプロジェクションマッピングシステムを4K画質で開発することである。また、複数プロジェクタの映像が重なることで生じる照度や色の変化をFPGAボードと画像処理技術を組み合わせて、自動的に計算し補正する。それにより、立体物をどこから見ても実物のようにリアルな質感に見える投影システムの構築を目指している。 システムの開発では、(1)~(5)の具体的な目的に分けて計画を進めてきた。研究3年目となる本年度は、研究(5)として専門的な知識がない人でも直感的に簡単な操作で使えるアプリケーションの作成を中心に行った。より実用性の高いものにするため、開発したのちに被験者が評価を行い、さらにアプリの改善を行った。また鑑賞者の妨げにならないよう、プロジェクタの設置場所が自由にできるシステムにすることや、映像制作者が普段使い慣れている市販の動画作成用ソフトともスムーズに移行や活用ができることも目指した。 基礎的な技術は昨年度までに概ね開発できたが、リアリティの高い投影をするためにはさらに精度の高い補正技術が求められる。それには幾何補正計測やFPGAへのデータ転送速度などに課題があったが、プログラムの改善により短時間で計測ができるようになった。 またこれまで別々のソフトウェアで実行されていたため、制作者が操作するには、使いにくいという問題があった。このアプリの開発で誰でも使い易いシステム化に向けGUIを改善できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画や内容に沿って研究を進めてきたが、COVID-19の感染拡大の影響と研究代表者の所属機関の事情から研究環境が十分に整わず、計画にやや遅れが生じている。 本研究では、同型番での4K画質のFPGAボードやプロジェクタなどの機器が、複数台必要である。しかし年度当初の時期は、世界的な半導体不足によりこれらの機器を同時に調達することは困難であった。そのため研究効率を考えて、まずは操作性を良くするためのアプリ化を先に行い、GUIなどのソフトウェアの開発や改善を優先的に進めた。後半時期になると、機器の流通や社会情勢に変化がみられ少しずつ状況に改善が見られたことから、4K機器を導入しての研究を遂行した。今後は進捗状況が大幅に改善するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、投影した映像を立体物の凹凸に合わせて変形して、映像を完全に一致させる投影技術の開発が不可欠である。また複数台のプロジェクタ映像を360度継ぎ目なく滑らかに繋ぐためには、立体物と投影映像をリアルタイムで正確に立体物の形状に合わせた画像変換が行えて、映像の色校正や明るさを補正できる技術の開発が必要である。しかし、補正を行ってもわずかな振動で映像ずれが生じてしまい、再度補正が必要になるという現場課題があることも分かった。そこで、当初の計画に加えてアプリに位置ずれの補正機能を追加して実装したいと考えている。とりわけ展示の際に必ず起きる、プロジェクタや立体物が振動や熱などでマッピングの映像のズレが生じる問題は、展示を損なうため大きな課題である。そのため、このズレを簡便に補正する技術の開発も新たに加える。また、360度投影手法を確立するために、複数台のプロジェクタ映像を統合的に管理するソフトウェアを開発し、基本操作のGUIを作成する。 いまだCOVID-19による影響や制限はあるものの、徐々に改善が見られる。またこの間に、ウェブ会議の利用やデータの共有などにより遠隔地でも情報共有ができる手法や知見を新たに得ることもできた。今後はそれを研究に活用しつつ、対面でも研究者間で積極的に情報交換を行い議論を深めながら研究を進め、HD画質で開発してきたシステムを4K画質へと移植を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行には同型番の機器が、複数台必要である。しかし、COVID-19の感染拡大の影響により世界的に半導体が不足したことで機器の価格が高騰して、調達にも時間が掛かる時期が続いた。そのため、研究方法をまずは既存にあるHD画質の基盤や機器を活用して開発を進めてから、4K画質のシステムに移植する方法へと計画を変更している。 また、より実用性の高いシステムにするためには変化が著しい社会の動向調査やニーズ、根本的な問題がどこにあるのかを知ることは極めて重要である。そのため、開発と並行して技術や社会動向の調査も進めてきた。本年度は制作者や研究者、技術開発者など多様な領域にヒアリングを行うとともに、周辺技術についても積極的に情報収集を行った。そのため、当初の計画から使用額に差異が生じている。
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