研究課題/領域番号 |
20K12542
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉田 右子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (30292569)
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研究分担者 |
川崎 良孝 京都大学, 教育学研究科, 名誉教授 (80149517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ / 北欧 / バルト諸国 / 公共図書館 / ラトビア / ノルウェー / フィンランド / デンマーク |
研究実績の概要 |
(1)コミュニティ自律型モデルの解明:アメリカ公共図書館を「コミュニティ自律型モデル」として歴史空間的発展を中心に俯瞰し、文化拠点としての公共図書館のありようを検討した。具体的には、アメリカ公共図書館運動開始期の19世紀後半の思想と実践に関わる報告書、論文、図書館年報等の原典を分析した。今年度は国家としての図書館法を持たないアメリカにおいて公共図書館の理念を定め実践の指針となってきた『図書館の権利宣言』について、歴史的分析を通して現在の「宣言」が含意する内容と理念について総合的な分析を行った。 (2) 国家関与型モデルの解明:スカンディナビア・バルト諸国の公共図書館に関わる文化関係財の公平配分を基調とした政策を明らかにするために、ノルウェーの文化政策における図書館振興策について調査を進めた。具体的にはノルウェーの国立文化評議会による「文芸作品調達制度」に焦点を当てて、制度の概要・歴史・現状、制度をめぐる議論と課題、ノルウェー文化政策における同制度の位置づけを検討し、文芸作品調達制度がノルウェー語・ノルウェー文化の保護に寄与していること、読書材の公正な配付の役割を果たすことで図書館を通じた文化へのアクセスを保障し、民主主義の醸成の場としての公共図書館の役割を強化していることを明らかにした。 (3)ラトビア文化政策と公共図書館の実態調査:ラトビアの出版と読書の現況について、ラトビアの出版統計を通して出版状況を把握し読書振興活動を調査した。また図書館界については、ラトビア国立図書館の概要、公共図書館の状況をラトビア国立図書館の報告書、図書館統計等の文献を用いて調査した。フィールドワークの遂行に替えて、ラトビア国立図書館が運用する図書館ポータルサイトからラトビア図書館界の詳細な動向を押さえるとともに、首都リガ中央図書館のウェブサイトを継続的に訪問し、サービスの実態を細かく把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1)コミュニティ自律型モデルの解明と(2) 国家関与型モデルの解明については、それぞれ研究が進展している。しかしながらCOVID-19による海外渡航規制により、当初予定していたラトビアおよびエストニアにおけるフィールドワークのための渡航ができず、計画していたフィールドワークによる公共図書館の実態調査が遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究課題として(1)コミュニティ自律型モデルとしてアメリカ公共図書館制度の解明、(2) 国家関与型モデルとして北欧・バルト諸国の公共図書館制度の解明、(3)エストニア文化政策と公共図書館の実態調査の3つに関わる研究を掲げていた。しかしCOVID-19の感染状況がフィールドワークの遂行を妨げており、2021年度も海外調査ができなかった。フィールドワークの見通しがつかない状況が2022年度も続くことが予想される。 2022年度内に渡航ができない可能性が高いことを考慮し、(3)に替えて(2)の研究を集中的に行う方向に研究方針を変更する。具体的には(2)の「国家関与型モデルとして北欧・バルト諸国の公共図書館制度の解明」の一環として、デンマークの公共図書館制度を対象にし、文化政策の側面から制度の実際と理念的基盤を解明する研究を実施する。この研究に関して、分析に必要な情報及び文書はすべてウェブサイトで公開されているために、それらの資料を利用して研究を進める。バルト諸国については、フィールドワーク以外の方法で研究課題を進める方策として、ウェブサイト調査を今年度も継続する。ラトビア国立図書館については、関係者と既にコンタクトが取れている状況にあるため、最新文書を入手できる見込みがある。定期的なコンタクトを通じて関連文献を入手し調査を進める。(1)については2021年度と同様、20世紀公共図書館の思想と実践に関わる文献調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により、海外におけるフィールドワークなどが実施できなくなったため次年度使用額が生じた。次年度に文献調査及び成果公表のために使用する。
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