• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

EdTechの次へ:本質的学びのためのICTとインクルーシブ教育のプラットホーム

研究課題

研究課題/領域番号 20K12550
研究機関津田塾大学

研究代表者

柴田 邦臣  津田塾大学, 学芸学部, 教授 (00383521)

研究分担者 松崎 良美  東洋大学, 社会学部, 助教 (00822157)
吉田 仁美  日本大学, 文理学部, 准教授 (20566385)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードEdTech / 障害児 / インクルーシブ教育 / 本質的学び / Learning Crisis / 体験学習 / 社会的学び
研究実績の概要

EdTechは私たちの「学び」の本質的な向上に結びついているのだろうか。2021年度においても、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大にさらされた障害児の 「学び」全般の危機的状況=Learning Crisisとでも呼ぶべき状況が続いている。その中で本研究は、まさに現在求められている、EdTechとインクルーシブ教育の双方を「情報技術を社会的に活用する」という社会情報学の観点から架橋し「本質的学び」の具体例を実証すること目標としている。
2021年も、実際に各博物・科学・美術館など文化施設は入館利用や各種行事などが制約されてきた。多くはデジタルやオンラインでのコンテンツ提供の工夫をしているが、障害児向けとは言えなかったため、障害のある子どもたちも活用可能な形でできるものを集約して横断検索できるようなWebサイト=学びの危機(まなキキ)サイトを 実際に構築・拡充し、インクルーシブな学びに有効かどうか、実践的な実証をおこなった。それらの成果はY., Matsuzaki, K., Shibata(2021), W., Hamamatsu, K., Shibata(2021)などで報告されている。それに合わせ2021年度後半は、実際に文教施設や、障害児向けの学習支援活動をオンラインなどで視察・観察したり聞き取りを行ったりして、オンライン会議システムや動画共有サイトなどでの実践的なフィールドワークを実施し、その状況を整理しつつ、試験的なコンテンツ作成なども行った。それらの成果は、C., Kaihara, K., Shibata(2022)、柴田(2021)などで報告されている。さらにAIなどのテクノロジーの現状の整理(柴田, 2022など)など、成果を上げることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2年目となる2021年度も、COVID-19の影響が続く中で、本研究もスケジュールの調整を迫られた。もちろんCOVID-19 Crisisは多くの社会混乱を引き起こしたが、その現状は「EdTechの次」という本研究のテーマとしては、極めて重要な状況であるともいえる。それらに対応することで、進捗上の遅れは若干、発生しながらも、内容的にはより発展した方向に進むことができたため、おおよそ順調であると自己評価している。
本研究の現況と進捗として、特に留意しているのは、主として2点ある。
まずひとつめが、COVID-19 Crisisによって、本研究の対象となっている文教施設や、学習の場などが休館していたり、時間制限があったり、外来者の制限があったりしているなど、まさにLearning Crisisに直面していたことが多かった点である。そのため、通常のインタビュー、視察、情報収集という形では、可能であった限られた範囲での実施となった。そのため、調査でカバーできた範囲という点では事前の見込みより減少しているところがある。
一方、このようなCOVID-19による影響は、本研究に、望外の進展ももたらしていると言える。現在、本研究では、文教施設や学習の場・施設を紹介したり、そこでの内容を取り上げたようなコンテンツを、動画としてストックするという方法を追加している。これは2020年以降、対面での学びが制約を受け、一方でGIGAスクールなどでデジタル化が進んだ中で、障害のある子どもたちにとって、動画サイトなどの視聴行動が幅広く定着し、またそれを活用して「学ぶ」という意識も広くもたれるようになった点があげられる。動画コンテンツも踏まえた動向の把握と実証実験という視野を得て、テストに取り掛かれているところは、本研究の進捗に前向きの影響をもたらしている。

今後の研究の推進方策

2022年度は、本研究として、これまで及び引き続いての調査分析と理論考察を積み重ね、まとめをめざす時期となる。まず、今年度はCOVID-19の影響がだいぶ落ち着いてくると考えられるため、これまで実施してきた調査結果をもとに、追跡調査としてのインタビュー・視察を実施し、必要に応じて調査票を配布するなど、補充的な調査を進める。それらを受けて、障害のある学習者向けの、文化施設の教育資源のインクルージョンを構想し、その実証をはかる。すでにコラボレートをはじめている、いくつかの文教施設とも連携し、さらに障害当事者向けの支援プログラムとも協力しながら、教室内外でのアクティブ・ラーニングと博物館・科学館等地域リソースの活用の実践例を探りたい。特に前年度には、先述のようにCOVID-19 Crisisの結果のLearning Crisisの中で、動画コンテンツへの関心と障害児への有効性に注目できたため、その成果を活かして調査分析を進める。
そしてまとめの段階として、学術報告・論文執筆を進める。このLearning Crisisと教育資源のインクルージョンは、日本だけではなく世界的にも注目に値する問題である。そのため、国際会議などでの発表をめざす。さらに試験的に制作した動画コンテンツのデータベースを、障害児当事者の家庭などで試用していただくなどして、幅広い社会貢献もめざしていきたい。
以上をとおして、Learning Crisisとでも呼ぶべき教育の混乱と、 GIGAスクール構想による急速なオンライン化という状況の中で、「EdTechの次」を志向する本研究として、「アクション・リサーチ」としての特性をいかし、具体的な社会貢献をめざす形での推進をはかる。

次年度使用額が生じた理由

本研究はその目的上、障害のある学習者向けに、文化施設の教育資源のインクルージョンをインタビューし分析する調査であったり、教室内外でのアクティブラーニングと博物館・科学館等地域リソースを考察するためのフィールドワーク旅費などが主要な経費の一つとなっている。2021年度はCOVID-19の感染拡大も続き、やや落ち着きつつはあるものの、旅費を執行していないため、次年度使用が生じた。しかし、2022年度は、COVID-19の影響もどんどん少なくなり、文教施設も開館や活動を通常の状態に戻すなどの動きも見られる。今年度はその分を、追跡・補充のフィールドワークとして、重点的に力を入れ、傾斜配分して使用していく計画である。さらに、研究を補助する人材を増員するなどして、まとめの年度に向けて研究を加速する。
また、Learning Crisisの動向として、動画コンテンツへの注目が得られているため、障害のある子どもたちに提供していく方向性として、動画コンテンツのインクルーシブな可能性に注目し、そのための経費支出をはかって、「EdTechの次」として求められるインクルージョンを構想していきたい。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] コーヒー業界にみる障害者就労の実態とCOVID-19 Crisis -質問紙調査の報告と単純集計 -2022

    • 著者名/発表者名
      濱松若葉,柴田邦臣
    • 雑誌名

      津田塾大学紀要

      巻: 54 ページ: 275-291

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Learning Crisis (1) School Closure and Learning Crisis of Special Education by COVID-192021

    • 著者名/発表者名
      Y., Matsuzaki, K., Shibata,
    • 雑誌名

      Review of Disability Studies

      巻: Vol. 17, No. 3 ページ: 1-20

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Learning Crisis (3) Vocational Education for Students with Disabilities2021

    • 著者名/発表者名
      W., Hamamatsu, K., Shibata,
    • 雑誌名

      Review of Disability Studies

      巻: Vol. 17, No. 3 ページ: 1-20

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 「もうそれだけの人類」 -POST-COVID-19の市民社会とDX/AIを現代文学から読み解く-2021

    • 著者名/発表者名
      柴田邦臣
    • 学会等名
      社会情報学会(SSI)大会シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 『英語の学び』は“Learning Crisis”に直面するか?-Covid 19下の英語教育をICTから考える2021

    • 著者名/発表者名
      柴田邦臣
    • 学会等名
      英語ユニバーサルデザイン教育学会第2回研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Civic TechとCitizenship-Rated Society -「市民」のありかはどこか?-2021

    • 著者名/発表者名
      柴田邦臣
    • 学会等名
      社会情報学会社員総会シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] やがてCitizenship-Rated SocietyをもたらすLearning Crisisのために:人新世としてのCovid-19 CrisisとDX化する社会2021

    • 著者名/発表者名
      柴田邦臣
    • 学会等名
      総合人間学会大会基調講演
    • 招待講演
  • [学会発表] 障害のある子どもたちの"学びの危機"を考える-COVID-19がもたらしたLearning Crisisとソーシャル・インクルージョン-2021

    • 著者名/発表者名
      松崎良美, 柴田邦臣, 貝原千馨枝, 濱松若葉, 鷹田佳典, 本郷正武
    • 学会等名
      保健医療社会学会大会
  • [学会発表] 日本における障害者就労支援の「能力」観を再考する――COVID-19下のEssential Workersの概念比較から2021

    • 著者名/発表者名
      濱松若葉,柴田邦臣
    • 学会等名
      日本社会学会
  • [学会発表] Information Accessibility for Kanji; the Pilot Project of Academic Translation and Learning2021

    • 著者名/発表者名
      Mtsuzaki, Y., Shibata K.,
    • 学会等名
      the 37th Annual Pacific Rim International Conference on Disability and Diversity
    • 国際学会
  • [学会発表] A Survey of Difficulties in Learning English in Japanese Special Education: Focusing on New-Language Learning Disabilities and Their Learning Environment2021

    • 著者名/発表者名
      Kaihara, C., Shibata, K.
    • 学会等名
      the 37th Annual Pacific Rim International Conference on Disability and Diversity
    • 国際学会
  • [図書] Diversity and Inclusion in Japan (うち、7. Reasonable accommodation and information accessibility for students with disabilities in Japanese higher education)2022

    • 著者名/発表者名
      Lailani Alcantara, Yoshiki Shinohara (7章:Yoshimi Matsuzaki, Kuniomi Shibata)
    • 総ページ数
      232
    • 出版者
      Routledge
    • ISBN
      9781032289892
  • [図書] 学習障害のある子どもが第2言語を学ぶとき (うち、第5章「限局性学習困難者の第2言語スキルに関するアセスメント)2021

    • 著者名/発表者名
      ジュディット・コーモス、竹田 契一、飯島 睦美、緒方 明子、原 惠子、品川 裕香、柴田 邦臣、貝原 千馨枝
    • 総ページ数
      228
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750352886

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi