• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

機械と人間との感性および創造性の異同をめぐるネオ・サイバネティクス的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K12553
研究機関山梨英和大学

研究代表者

大井 奈美  山梨英和大学, 人間文化学部, 講師 (50635026)

研究分担者 河島 茂生  青山学院大学, コミュニティ人間科学部, 准教授 (00453449)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2026-03-31
キーワード情報と創造性 / 生命情報 / ネオ・サイバネティクス / 生成AI / 自律性 / 社会情報学 / オートポイエーシス / 感性
研究実績の概要

本研究は、生きるうえでの意味や価値という生命にとっての自律性の観点から情報を捉え直すネオ・サイバネティクスのアプローチによって、創造性や感性について人間と機械との差異に注目しながら考察する。生きるうえでの意味や価値は、人間においては倫理の課題領域にも近接する面がある。そうした意味での倫理的観点も考慮しつつ創造性や感性について再評価することで、生命を尊重する未来の情報社会の価値観構築に資することが本研究の目的である。

本年度は、研究チームによる定期的な研究検討会と、前年度から継続中の「情報と創造性」を主題とする連続公開研究会を通じて、機械と人間の創造性の異同をより明確にすることができた。人間をはじめ生物は、機械とは異なり、自分自身を創造する根源的な創造性(ラディカル・クリエイティビティ)を有している。さらに人間は、自分自身を創造するだけでなく、その創造性に基づいて、機械のように他のものを創造することもできる(ダブル・クリエイティビティ)。こうした成果の一部は、本年度、国際シンポジウムや国内の学会、研究会を通じて公表し、さらに専門的な議論を促すことができた。また、これらを理解するための基盤となる学問的知見を、講演会や書籍を通じて一般向けに示す機会を得ることができた。

本年度はStable DiffusionやChatGPTといったコンテンツ生成系のAIが脚光を浴びた年であったが、そのようなときにこそ、機械と人間の創造性の異同を明確にする意義は大きい。また、これをふまえて、社会および技術全体のあるべき姿を構想し、それをどのように創造していくかという点でも、本研究課題をさらに進めていく意義がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「情報と創造性」をめぐる連続公開研究会を開催できた。また、隔月で定期開催してきた本研究課題メンバーによる集中討議会で、国内外における関連先行研究の広範な調査・相互報告・検討を継続的に行うことができた。こうした研究活動の結果として、本研究課題を推進する理論的基礎の構築と、各研究メンバーが取り組む多様な応用分野における具体的な課題発見の双方について、着実に前進できたものと考えている。

研究成果の一部を、オンラインでの国際シンポジウムを含む国内外の場での研究発表や招待講演、およびサイバネティクス理論をめぐる概説書籍などをつうじて、専門的聴衆のみならず広く社会一般に向けても還元できた。

本研究課題の最終的成果の一つとなる書籍の具体的構想は次年度以降となるものの、その書籍構想の理論面および応用課題面での進捗がみられるため、全体として順調に研究を進展できていると考えている。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策は、次の二点を段階的に進めていくことにある。

第一に、本研究課題の最終成果の一つとなる書籍の具体的な構想と検討、および、各研究メンバーによる分担執筆である。これには、情報と創造性をめぐる理論上の検討だけでなく、芸術や生命論等の応用課題への取組みも含まれる見込みである。

第二に、国際的な研究発表の場を設け、本研究課題の総合的成果を広く国内外に還元し、さらなる検討を促進することである。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染症の感染拡大状況に即して研究実施計画を再調整したことによる。本研究課題の最終成果としては、主に、(1)国際的研究発表会の開催および(2)研究成果をまとめた書籍の刊行、という二点を予定している。当初は(1)から(2)へという順序での成果発表を構想していたが、コロナウイルスの感染拡大により海外での調査や研究交流等が延期となったことから、(1)と(2)を並行して推進するように成果発表計画を再調整することとなった。調整に伴い、(1)の海外での活動に係る旅費が、次年度使用が生じた主な理由である。

したがって今後はまず、成果書籍につながる費用に助成金を使用する計画である。具体的には、継続的な先行研究の調査や、国内における対面形式での関連研究会および学会への参加旅費等に、適切に助成金を使用する予定である。そのうえで、国際的研究発表会の準備や実施をめぐる諸費用に助成金をあてたいと考えている。

備考

digital-narcis.org
https://digital-narcis.org
ウェブサイト「digital-narcis.org」はネオ・サイバネティクス研究をめぐるものである。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [学会発表] 機械の創造性を支える人間の創造性2023

    • 著者名/発表者名
      河島茂生
    • 学会等名
      ネオ・サイバネティクス研究会/情報システム学会基礎情報学研究会/青山学院大学革新技術と社会共創研究所、合同連続研究会「情報と創造性」第11回
  • [学会発表] Life-in-formation: Cybernetics of Heart2022

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Harashima
    • 学会等名
      Art, Technology and Philosophy Symposium (II) Cybernetics for the 21st Century
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 情動論的転回・再考2022

    • 著者名/発表者名
      原島大輔
    • 学会等名
      日本メディア学会2022年春季大会ワークショップ
  • [学会発表] 生命とコミュニケーションについての創造的再考:ネオ・サイバネティクスを応用した芸術実践の試み2022

    • 著者名/発表者名
      西田騎夕
    • 学会等名
      ネオ・サイバネティクス研究会/情報システム学会基礎情報学研究会、合同連続研究会「情報と創造性」第10回
  • [学会発表] 先端技術とクリエイティビティ2022

    • 著者名/発表者名
      河島茂生
    • 学会等名
      一般社団法人応用脳科学コンソーシアム アドバンスコース「脳を育む」第3回
    • 招待講演
  • [図書] 駒村圭吾 編著, 井上明人 [ほか] 著『Liberty 2.0:自由論のバージョン・アップはありうるのか?』2023

    • 著者名/発表者名
      河島茂生(分担執筆:第4章)
    • 総ページ数
      350
    • 出版者
      弘文堂
    • ISBN
      978-4-335-35934-7
  • [図書] 『人間非機械論:サイバネティクスが開く未来』2023

    • 著者名/発表者名
      西田洋平
    • 総ページ数
      325
    • 出版者
      講談社
    • ISBN
      978-4-06-531778-5

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi