研究課題/領域番号 |
20K12561
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
新藤 透 國學院大學, 文学部, 教授 (30433676)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地方改良運動 / 通俗図書館 / 井上友一 / 水野錬太郎 / 国民読書運動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国民国家形成に関して図書館がどのような役割を果たしたのか解明することにある。図書館がどのような役割を政府により担わされ、そして実際に機能したのか考察する。具体的には、①明治期の内務省主導の地方改良運動による図書館推進策とその実態、②アジア太平洋戦争下における文部省の国民読書運動の推進と実態、の2点に着目して解明する。 令和2年度は、主に地方改良運動を中心に研究を行った。同運動を中心となって推進した内務省官吏の井上友一、水野錬太郎、田子一民が図書館に対してどのような役割を担わせていたのか解明を行った。この点に関しては論文を1本投稿し、採録が決定している。ほかに論文3本を執筆したので、来年度に順次投稿する予定である。さらに内務省の意を受けて地方でどのように図書館推進策を行ったのか明らかにするために、個別事例を収集してより深く検討すべき地域を選定した。新型コロナウイルスの全国的蔓延により、筆者の居住地域である関東圏以外の史料採訪は困難となってしまったが、埼玉県、千葉県には訪問して史料収集に着手することができた。埼玉の事例に関しては論文としてまとめることができたので、来年度投稿する予定である。また新潟県に関しては関東に保管されている史料を収集することができた。来年度では実際に現地を訪れる予定である。 アジア太平洋戦争下の国民読書運動に関しては、政府側の動向を中心に史料を収集した。しかし国民読書運動に至るまでには、大正から昭和初期までの民力涵養運動、国民精神作興詔書、国民精神総動員運動などの一連の「国策運動」を踏まえる必要があることが明らかになった。来年度でも引き続き史料収集を行う予定であるが、国民読書運動以外の上記に挙げた運動の関連史料にも収集対象を広げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、地方改良運動を推進した内務省の関係史料を中心に収集した。特に同運動で中心的役割を果たした井上友一、水野錬太郎を中心として彼らの後輩にあたる田子一民の著作を収集し、言説分析を行った。 地方において同運動をどのように実施したのか、個別事例の検討では研究対象地を絞込み、順次現地調査を行った。埼玉県、千葉県、新潟県であるが、埼玉県では既に現地調査を終え、論文としてまとめることができた。来年度に投稿する予定である。千葉県に関しては来年度も引き続き調査を継続する。新潟県に関しては、関東にある史料を集めることができたが、現地調査は新型コロナウイルスの全国的拡大により本年度では出来なかった。来年度実施したい。さらにアジア太平洋戦争下の図書館活動の史料を収集した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、①関東以外での地方改良運動に関する史料収集活動を行う。②アジア太平洋戦争下で行われた国民読書運動の個別事例を検討するために地方に行き、関連史料を収集する。③明治後期の地方改良運動から昭和初期のアジア太平洋戦争までの間に政府は民力涵養運動、国民精神作興詔書、国民精神総動員運動などの「国策運動」でも図書館が関与させられていたことが判明した。今後はそれらも含めて検討する必要を感じているので、来年度も引き続き史料収集を継続する。成果がまとまったものから、順次論文として学会誌、紀要などに出来上がったものから投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は活字化されている史料を中心に収集を行った。残金は次年度の史料収集費に充てる予定である。
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