研究課題/領域番号 |
20K12562
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
杉江 典子 東洋大学, 文学部, 准教授 (50383295)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 図書館 / レファレンスサービス / レファレンス情報源 / 出版 / 情報サービス / 学術情報流通 |
研究実績の概要 |
本研究では,知的基盤であるレファレンス情報源の生産というプロセスにおいて,誰がどのような役割をどのようにして担っているか,現在どのような課題を抱えているかを明らかにすること,レファレンス情報源の役割がどのように変わろうとしているのかを検討することを目的としている。 2022年度は,2021年度に国立国会図書館より入手した書誌データを用いて,レファレンスブックの出版傾向の分析を継続し,5月に日本図書館情報学会春季研究集会において「我が国のレファレンスブックの出版傾向:国立国会図書館所蔵図書の書誌データに含まれる件名標目と分類記号を用いた分析」という題目で口頭発表した。さらに,このうち,レファレンスブックの出版点数に関するデータのみを整理して論文としてまとめ,12月に雑誌に投稿した。これらを通じて,レファレンスブックの出版点数は,全体としては1980年代から2000年代(種別により異なる)にピークを迎えた後減少していたが,その後減少傾向が続くものと,下げ止まりあるいは増加に転じているように見えるものとがあった。つまり一般的に考えられるように,インターネットの普及や情報源の電子化により,紙媒体のレファレンスブックが分野を問わず一律に減少しているわけではないことが示唆された。 平行して,国立国会図書館から得たレファレンスブックの書誌データのうち,レファレンスブックの出版者に関するデータを集計した。出版年ごとレファレンスブックの種別ごとに集計すると,1者あたりの出版点数が大きく増減している種別と,1者あたりの出版者数が常に1冊程度でレファレンスブックを出版する出版者数自体が増減している種別とがあった。出版点数の増減や出版者数に見られるこれらの違いは,電子化の影響をどのように受けているかの違いであると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,ここまでに行ってきたデータの分析がある程度まとまり,学会発表を行った後,雑誌論文を執筆して投稿することができた。よってこれまでのところは無事に進めることができたと考えている。またこれらの成果を踏まえて,次の調査の検討にも着手できている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究においては,レファレンスブックの出版傾向が全体としてはピークを迎えた後減少し続けているが,分野ごと種別ごとにみると差異があることを明らかにした。これらの出版傾向の変化や差異の要因を書誌データそのものや,現存する他のデータ類のみから把握することは困難である。よって,2023年度は出版者を対象に,レファレンスブックの出版に対する現状認識,情報源の電子化やインターネットの普及によって受けている影響や課題,電子的な環境における運営方針などについて把握するための調査を行うつもりである。 2023年度前半には,図書館において基礎となるレファレンスブックの出版者を対象にした質問紙調査を行い,質問紙調査において,次に行う予定のインタビュー調査やレファレンスブックのデータを提供してくれる出版者を募る。2023年度後半には,質問紙調査の結果を集計し,同時進行で,インタビュー調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務校の業務のため,予定していた学会出張に行けなかったこと,また購入予定であったいくつかの情報源が入手できなかったことによる。今年度,学会参加を計画している。
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