研究課題
音声信号や音楽信号には様々な速さの時間変動成分が含まれており、それらを正しく知覚するためには複数の時間変動成分の情報を瞬時に抽出し統合することが重要である。統合失調症(SZ)患者には言語機能障害があることが知られており、それは様々な主要症状と密接に関連している。しかし、言語機能障害の根底にある神経振動のメカニズムは十分に解明されていない。本研究では、音声の緩急を反映したガンマ帯域における神経振動を評価することで、SZにおいて音声知覚のための振動機能が損なわれているかどうかを調べた。SZ患者26名と健常対照者26名が参加した。低速(約5Hz)のエンベロープと80Hzの基本周波数(F0)を持つ単語音声である単調音声(MS)を聴取した際の刺激誘発ガンマ帯域神経振動とそのシータ速度の振幅変調(AM)の関係を検討した.また、MSと同様の時間特性を持つ非音声、5Hzの振幅変調された80Hzのクリック音(AMC)も使用した。脳波指標と臨床症状との相関は、スピアマンの順位相関係数を用いて評価した。その結果、左半球のMSのF0に位相同期するガンマ帯域神経振動がSZでは障害されていることがわかった。また、刺激誘発ガンマ帯域神経振動のシータ速度のAMのパワーとの包絡線位相同期が、SZでは発話音に特異的に低下していた。また、発話音誘発ガンマバンド振動とSZの陰性症状との間に有意な負の相関が観察された。本研究により、SZにおける音声誘発ガンマ帯域神経振動の変化は、左半球に限局していることが明らかになった。また、SZにおけるガンマ帯域神経振動のシータ速度AM変調を介した低頻度音声エンベロープの神経追跡機能の低下は、音声条件に特異的であった。これらの結果は、SZ患者では、音声の振幅崩落成分や時間微細構造の処理に関連するガンマバンド振動機能が損なわれていることを示すものである。
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てんかん研究
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NeuroImage
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