研究課題
通常の聴力検査では異常が認められないにも関わらず,日常の生活における「聞き取り」困難を有する人達が存在する.最近では,聞き取りと発達障害との関連も示唆されている.聞き取り欠損に関する機構として,情報が蝸牛などの末梢から上行して,左右の聴覚野(中枢)に至る聴覚情報処理システムのうち,大きく分けて末梢と中枢の機能の異常や低下が示唆される.ただ聴力検査で聞き取り異常が認められないため,多くは中枢レベルでの機能低下が大きな要因であると考えられる.そこで本研究の目的は,ヒトの「聞き取り」の機構を中枢(大脳皮質)レベルで解明することである.最終年度は,2音節の言語音を用いて,両耳に同時に提示する両耳分離聴検査の実験を遂行し,主観的検査による右耳優位性と,課題遂行時の脳磁図を計測して聴覚の定常応答である聴性定常応答の結果を得た.健常者を対象として,20名の行動実験の主観評価による両耳分離聴刺激時に左耳から提示した言語音より,右耳から提示した言語音をより正しく回答する右耳優位性を確認した.また生理心理学的指標として,脳磁図を計測した結果,被験者の右耳優位性に対応する聴覚野の応答を示した.健常者の聞き取り時における主観的評価である行動実験と生理心理学的指標の結果の相関性,及び聴性定常応答が刺激音への注意に関連していることから,聞き取りにおけるヒトの注意機能の重要性が示された.以上の結果をまとめて学術誌に公表した.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
まぐね
巻: 18 ページ: 12~17
IEEJ Transactions on Electronics, Information and Systems
巻: 142 ページ: 543~549
10.1541/ieejeiss.142.543