親子の非言語コミュニケーションの1つ“抱っこ”が親および乳幼児に及ぼす影響について心拍変動解析を中心に発達を追って定量的に検証した。親の手にフレキシブル圧センサを装着して、普段の縦抱き、ぎゅっと抱きしめる(ハグ)、走れるくらい強く抱きしめるという触圧の異なる3タイプの触れ合いを試行した結果、ハグについてのみ特徴的な心拍変化が見られた。具体的には、生後4ヵ月以上の乳児では、同居している母親・父親、つまり両親にハグされたときの心拍間隔の増加率は、見知らぬ女性にハグされたときよりも高くなり、リラックスすることが明らかとなった。この変化は、生後4ヵ月未満の乳児ではみられなかった。また母親・父親は自身の子をハグすると、ハグする前と比較して、心拍間隔の増加率が上がり、リラックスすることも見出された。こうした生理変化は、これまで科学的に検証することが難しかった言語獲得前の子どもの安心感を理解する足掛かりとなることが期待される。本研究費を用いた取り組みによって得られた結果は、原著および総説論文としてそれぞれ1報ずつ発表した。また複数の学会でも成果発表を行った。研究代表者は、大学での研究と並行して、地域の子育て家庭支援センターでも保育や心理検査の実践活動を行い、育児現場とつながった基礎研究の実施に尽力した。本研究を遂行する過程で、新たにユニークな乳幼児の生理現象も見出されており、今後、別プロジェクトとして発展させていく。
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