研究実績の概要 |
今日、親による子の虐待やネグレクトなどが社会的な問題となっており、適切な養育行動の発現に必要なメカニズムを理解することが重要な課題となっている。養育行動が適切に発現するためには、知覚刺激として入力された子を好む、注意を向けるといった認知処理が関わると考えられる。そこで本研究では、一夫一妻で家族で子を育てる小型霊長類コモンマーモセット(Callithrix jacchus)を用いて、養育行動に関わる認知機能と、その神経基盤を検討する。具体的には、オペラント条件づけを応用した認知課題を用いて、提示された子マーモセットの刺激に対する選好および注意を定量する。その後に、被験体の内側視索前野の神経細胞を損傷し、上記の認知的処理がどのような影響を受けるかを検討する。 本年度はタッチパネル型のオペラント装置の作成を行った。オペラント装置は、防水タブレットPC(arrows Tab WQ2/E2, Fujitsu)上で動作する実験プログラム(E-prime 3.0, Psychology Software Tools)で刺激提示、反応取得、信号出力を行い、マイコン(M5Stack Basic, M5Stack)からピエゾマイクロポンプ(SDMP302, Takasago Electric, inc.)を駆動して液体の報酬を提示する設計とした。これらの装置一式をマーモセットケージに固定するフレームを特注し、問題なく動作することを確認した。 また、実験時に提示する刺激画像を作成するため、マーモセット新生児の顔写真を経時的に取得した。同腹で産まれた新生児のオスおよびメス1子ずつを対象として、生後0週齢から5週齢まで、各週齢の顔写真をデジタルカメラで撮影した。撮影した画像に対してトリミングや背景の除去などの画像処理を行い、実験用の刺激画像を作成した。
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