本研究の最終目的は、死後画像診断のみで縊頸[いわゆる(首吊り)で自殺、他殺が含まれる]・絞頸(紐など索状物で首を絞める、他殺が多い)・扼頸(手で首絞め、他殺)を含めた頸部圧迫を画像診断することでした。このような頸部圧迫においては、舌骨や甲状軟骨が骨折することが少なくなく、これらの骨形状や、頸部への荷重やその方向などがどのように作用して骨折が生じるのか探ることが目標でした。 そこで、法医解剖によって縊頸による頸部圧迫が死因であった症例の死後CTについて、頸部のどの高さに頸部圧迫の索溝が多く生じて、舌骨や甲状軟骨のどの部分が骨折しやすいのか、さらに、死後CTによって明らかにできるのはどのような骨折であるのか調べました。結果、索溝は頸部の正中において、甲状軟骨の喉頭隆起よりも頭側に位置することが多く、甲状軟骨上角部が前方に変形した骨折を多く生じていました。このような骨折を明らかにするには、頸部を後屈させるなど撮影方法が必要と分かりました。また、小さい骨格ですので、死後CTのスライス厚は小さいことが望ましいことも分かりました。 国内にて開催される、第79回日本放射線技術学会総会学術大会(2023年4月)、および第107次日本法医学会学術全国集会(2023年6月)にて、研究結果の発表を行うことになっている(応募・採択済み)。放射線診断に関する国際学会については、2023年度から渡航可能になったが、研究期間が終了しており、本研究テーマの結果について応募することは叶わなかった。 解剖医不足を補完する死後CTの需要は、今後高まることが予想されていますが、これにより、臨床で撮影を行っているような、死後CTの経験の少ない従事者にも、撮影・読影の要訣を示すことができたと考えています。
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