研究課題/領域番号 |
20K12594
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
島 亜衣 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (50757309)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組織工学 / organ-on-a-chip / マイクロ流路 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、血液脳関門(BBB)構成細胞からなるBBBスフェロイドをマイクロアレイ内に配置して制御し、ハイスループットな薬剤透過性試験を実現することである。医薬品の開発においてヒトBBBの透過性を調べることは重要であるが、高効率に透過性試験を行えるモデルは存在しない。本研究では、BBBスフェロイドとマイクロアレイを組み合せることで、簡便に、多数のサンプルを一度に評価することを目指す。 2年目である2021年度は、マイクロアレイの設計と作製、BBBスフェロイドのマイクロアレイへの配置、マイクロアレイ内外でのBBBスフェロイドへの蛍光物質取り込み試験の予備検討を行った。まず、マイクロアレイの設計については、昨年度作製条件を検討した、市販の2種類のヒト脳血管内皮細胞由来スフェロイドの大きさを基準にして、流路の幅と高さを決定した。高精細3Dプリンタを用いて作製した鋳型を用いて、ソフトリソグラフィの手法でアレイを作製したところ、スフェロイドのアレイ内への配置に成功した。マイクロアレイ内のBBBスフェロイドに対し、薬剤取り込み試験の予備検討として、流れ条件あり・なしで蛍光物質を投与したところ、経時的にスフェロイド内の蛍光強度が増大することを認めた。また、作製したBBBスフェロイドがBBBの生理学的特徴を備えているかどうかを確認するために、マイクロアレイ外で、成長因子等の培養条件に依存して蛍光物質透過に対するバリア機能が変化するかどうかを調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度はマイクロアレイの設計と作製、マイクロアレイへのBBBスフェロイドの配置、マイクロアレイ内外での蛍光物質取り込み試験の予備検討を行った。昨年度、作製条件を決定したBBBスフェロイドの大きさを基準に流路を設計し、これを配置可能なマイクロアレイの作製に成功した。また、このマイクロアレイ内のBBBスフェロイドについて、流れ条件あり・なしで蛍光物質を投与し、経時的に断面蛍光写真を撮影して、蛍光物質の取り込み量を評価可能なことを確かめた。以上のように、最終年度のアレイ内での種々の蛍光物質を用いた透過性試験とBBBのバリア機能の評価にむけて、本研究は当初の計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、マイクロアレイ内に配置したBBBスフェロイドに対して、種々の分子量の蛍光標識デキストランや、脳血管内皮細胞に発現する排出系トランスポータの基質であるローダミン123を投与し、流れ条件によって取り込み量に変化がみられるかどうかを調べる。経時的にアレイ内のスフェロイドの断面蛍光写真を撮影し、蛍光強度を測定することで取り込み量の変化を評価可能であることはすでに確認しており、実験系は確立されたと考えている。一方、作製したBBBスフェロイドに生理的に充分なバリア機能が備わっているかについては引き続き検討が必要であり、適切な培養条件と蛍光物質の種類や濃度、処理時間、流れ条件などについての検討を続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会が、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン参加となったため、旅費として計上していた予算を本年度中に使用しなかった。当該金額については、作製したスフェロイドの生理的バリア機能をより多角的に評価するための、培養因子や蛍光物質の購入費として次年度に使用予定である。
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