本研究の目的は、血液脳関門(BBB)構成細胞からなるBBBスフェロイドをマイクロアレイ内に配置して制御し、ハイスループットな薬剤透過性試験を実現することである。医薬品の開発においてヒトBBBの透過性を調べることは重要であるが、高効率に透過性試験を行えるモデルは存在しない。本研究では、BBBスフェロイドとマイクロアレイを組み合せることで、簡便に、多数のサンプルを一度に評価することを目指した。 昨年度までに、マイクロアレイの設計と作製、BBBスフェロイドのマイクロアレイへの配置、マイクロアレイ内でのBBBスフェロイドへの蛍光物質取り込み試験の予備実験を実施してきたが、マイクロアレイ内へのBBBスフェロイド配置の成功率の低さと蛍光物質取り込みにおけるBBBの生理学的特徴の再現性に問題があることがわかり、本年度はスフェロイドの作製条件を再度検討した。タイトジャンクションの形成を確認した、市販のヒト脳血管内皮細胞のみからなるスフェロイドを用いることと、マイクロアレイ入り口の設計を変更することで、配置の成功率は向上した。また、分子量の異なる蛍光標識デキストランを投与して、同一スフェロイドの蛍光強度を経時的に測定することができたが、投与後1時間以上経過するとスフェロイドの破損が確認され、分子量の違いによる透過性の違いは評価できなかった。また、これらのスフェロイドに流れ刺激を与えながら蛍光物質を投与することもできたが、取り込み量に影響を与える流れ刺激条件の同定には至らなかった。 以上のように、本研究ではBBBスフェロイドの作製とマイクロアレイへの配置および蛍光物質取り込み実験のデモンストレーションはできたが、BBBのバリア機能の生理学的特徴を再現するまでには至らなかった。
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